アメリカ政府による高度なAI=人工知能モデルの輸出規制が続く中、日本や中国のAIスタートアップ企業が、規制対象となったアメリカの製品に匹敵する新たなAIモデルを相次いで開発したと発表しました。
アメリカのトランプ政権は2週間前、安全保障上の懸念から、アメリカのAI企業「アンスロピック(Anthropic)」が開発したサイバーセキュリティに特化した高性能モデル「マイソス(Mythos)」と、その制限版である「フェイブル5(Fable 5)」について、アメリカ国外への輸出を禁止する措置をとりました。
こうした中、中国のサイバーセキュリティ企業「360」は、アンスロピックの「マイソス」に対抗できるとする新たなAIツール「トゥロンフェン(Tulongfeng)」と、サイバー防衛を自動化する「イティエンジェン(Yitianzhen)」を発表したということです。ロイター通信によりますと、同社の創業者である周鴻禕氏は、脆弱性を発見するAIは国家の戦略的資産であると強調し、一部の国だけが高度な技術を独占することに警戒感を示したとしています。
一方、東京に拠点を置くAIスタートアップ「サカナAI(Sakana AI)」も、新たなAIモデル「フグ(Fugu)」を発表しました。同社によりますと、この最先端のAIモデルはアンスロピックのモデルに匹敵する性能を持ち、複数のAIモデルを連携させる機能に優れているとしています。
サカナAIの広報担当者は、新モデルの発表時期について「全くの偶然だ」と説明していますが、同社のウェブサイトでは「輸出規制のリスクなしに最先端の機能を提供する」と宣伝しています。同社は、輸出管理強化によるリスクを軽減したい日本の企業や政府機関を対象に提供する方針です。
サカナAIの共同創業者である伊藤錬氏は、先週開かれたG7サミットで、同盟国に対するAIへのアクセスを維持するようアメリカ政府に求めたほか、「AIは独占されるべき技術ではなく、共同で開発されるべきだ」と主張しています。
また、同社のCEOを務めるデビッド・ハ氏は、国家のインフラを単一の提供者に依存することは大きなリスクであると指摘し、「複数のモデルを連携させる『集合知』こそが、権力集中に対する実用的な防衛策になる」としています。
アンスロピックは急成長を遂げており、2026年5月時点での年換算の収益は470億ドル(約7兆2850億円)に達したということです。しかし、アメリカ政府による輸出規制が長引く中、アジアの企業は現地の言語や文化に特化した独自のAIモデルの開発を加速させており、アメリカ企業が残した空白を埋める動きが強まっています。なお、「360」はこの件に関するコメントの求めに応じていません。
