小惑星での資源採掘を目指すアメリカの宇宙スタートアップ企業「アストロフォージ」は、次期宇宙探査機の制御に人工知能(AI)を導入し、自律飛行を目指す独自のシステムを開発したと発表しました。
NASA(アメリカ航空宇宙局)などが探査機を運用する際、地球上のチームが通信を通じて制御を行うのが一般的です。例えば、2018年に小惑星に到達した探査機「オシリス・レックス」のミッションでは、8時間ごとのシフトに100人のオペレーターが配置されていました。
しかし、スタートアップ企業にとってこうした大規模な人員やインフラを確保することは困難です。このため、アストロフォージはAIを活用した自律制御システム「ソロ(Solo)」を自社で開発したということです。このシステムは、最新のAI技術であるトランスフォーマーモデルを基盤としています。
同社は、2027年に初の自律型探査機を打ち上げる計画です。このミッションはNASAの支援を受け、太陽に関する科学データを収集する予定だとしています。
これまで、AIの信頼性に対する懸念から、探査機の自律制御には従来のプログラムが用いられてきました。軌道上の衛星の姿勢制御にAIのニューラルネットワークが初めて使用されたのはわずか1年前のことであり、今回の計画が実現すれば大きな成果になるとしています。
2022年に設立され、これまでに5600万ドル(約86億8000万円)の資金を調達したアストロフォージは、過去に2機の試作機を打ち上げましたが、いずれもトラブルにより主要なミッションを達成できませんでした。深宇宙に向けて打ち上げられた探査機「オーディン」では、通信の確保が難航しました。地球から遠く離れた探査機と通信できる大型アンテナの数は限られており、通信可能な時間帯も短いことが課題となっていました。
こうした経験から、同社は探査機自体に問題を解決する「知能」を持たせる方針に転換しました。マシュー・ジアリッチ最高経営責任者(CEO)は、「世界中に5つのパラボラアンテナを設置して独自の地上ネットワークを構築するには、およそ2億ドル(約310億円)の費用がかかります。それよりも、AIモデルによって通信の課題を解決する道を選びました」と述べています。
開発チームによれば、新たなシステムは従来の制御アルゴリズムと、発電やナビゲーションなどの特定システム向けに学習されたモデル、そして探査機内の約2500のセンサーから得たデータで学習した総合的なAIを組み合わせたものになるということです。これにより、探査機自らが異常を検知し、自律的に復旧作業を行うことが期待されています。
同社は、2026年末までに打ち上げが予定されている3号機「ディープスペース2」にこのAIシステムを搭載し、試験運用を行う方針です。さらに、その後の完全自律ミッション「オートノミー1」では、地球からの受信機能を持たない探査機を打ち上げる構想も検討しているということです。
