アメリカのIT大手アマゾン傘下でクラウドサービスを手がけるAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)のマット・ガーマンCEOは、AI=人工知能の開発を行う「オープンAI」に対し、500億ドル(約7兆7500億円)規模の投資を行ったことについて、競合する企業への複数投資による利益相反への対応には慣れており、問題はないとの見解を発表しました。
ガーマンCEOは今週、アメリカのサンフランシスコで開催されたテクノロジー関連の会議に登壇し、自社の戦略について説明しました。アマゾンはこれまで、AI開発企業の「アンスロピック」に対して80億ドル(約1兆2400億円)の投資を行ってきましたが、新たに競合するオープンAIにも巨額の投資を行っています。
激しく競合する2つのAI企業と密接に連携することについて、ガーマンCEOは「AWSは自社のパートナー企業と競合することに多くの経験があり、問題はない」と述べたということです。
同氏によると、AWSは事業の初期段階から、すべてのクラウドサービスを自社で構築することは不可能だと判断し、他社との提携を進めてきました。同時に、技術が相互に関連しているため、パートナー企業と競合することも想定していたとしています。そのうえで、「自社製品がパートナー企業の製品と競合する場合でも、自社に不当な競争優位性を持たせないことを約束してきた」と説明しました。
現在、AWSの最大の競合の1つであるオラクルがAWS上でデータベースなどのサービスを提供するなど、クラウド市場での競合と協調は一般的になっています。しかし、2006年当時は、パートナー企業と競合しないことが重視されており、画期的な考え方だったということです。
AI業界においては、複数の競合企業に投資する動きが広がっています。今年2月にアンスロピックが300億ドル(約4兆6500億円)の資金調達を発表した際にも、オープンAIに出資するマイクロソフトなど、複数の投資家が参加していたということです。
AWSにとって、オープンAIへの巨額投資は、顧客に同社のAIモデルを提供し、技術開発のパートナーシップを築くうえで極めて重要な戦略でした。最大の競合であるマイクロソフトのクラウドサービスでは、すでに両社のAIモデルが利用可能になっていたためです。
さらに、クラウド大手各社は、顧客が用途に応じて最適なAIモデルを自動的に使い分ける「ルーティングサービス」の提供に注力する方針です。これにより、性能の最大化とコスト削減を図る狙いがあります。ガーマンCEOは、「計画の立案や推論、簡単なコード補完など、タスクごとに異なるモデルを使い分ける方向へ世界は進んでいく」と指摘しています。
この仕組みを通じて、アマゾンやマイクロソフトは自社開発のAIモデルの利用を促進していく方針であり、クラウド市場におけるパートナー企業との競争は今後も続くものとみられます。
