アメリカのIT大手アマゾンは、自社の衛星通信事業を強化するため、衛星通信会社「グローバルスター」を115億7000万ドル(約1兆7900億円)の現金で買収することで合意したと発表しました。イーロン・マスク氏の「スターリンク」が優位に立つ軌道上のモバイル通信市場への本格的な参入を目指す方針です。
今回の買収は、1株あたり90ドル(約1万3950円)で行われます。アマゾンは、グローバルスターの衛星運用やインフラストラクチャー、およびモバイル衛星サービスの周波数帯ライセンスをすべて取得するということです。これにより、今年後半に予定されている自社の衛星通信サービス「アマゾン・レオ(Amazon Leo)」の立ち上げに向け、端末への直接通信サービスを拡充する狙いがあります。
アマゾンのアンディ・ジャシー最高経営責任者(CEO)は先日、アマゾン・レオの顧客として、デルタ航空やAT&T、ボーダフォン、オーストラリアの国営ブロードバンドネットワーク、そしてNASA(アメリカ航空宇宙局)などが名を連ねていると強調しました。また同社は、民間航空機向けに、飛行中も高速インターネット通信を可能にする新たな衛星インターネットアンテナも公開しています。
アマゾン・レオの事業では、地球低軌道に3200機以上の人工衛星を打ち上げる計画としています。しかし、計画には遅れが生じており、これまでに打ち上げられた衛星は約200機にとどまっているということです。アマゾンは、今年7月までに約1600機を軌道に乗せるという連邦通信委員会(FCC)の期限について、延長を申請する事態となっていました。
一方、競合するスターリンクは現在1万機以上の衛星を運用しています。約150の国と地域で、一般消費者だけでなく、海運や航空業界などの企業向けにもインターネットサービスを提供しており、市場を牽引しています。
買収されるグローバルスターは、現在24機以上の低軌道衛星を運用しており、さらに50機以上の新たな衛星を取得する契約を結んでいます。また、既存の衛星網を更新するため、今年はスペースX社と代替衛星の打ち上げ契約も締結しているということです。
今回の買収に伴い、アマゾンはアップルとの間で、iPhoneやApple Watch向けの衛星通信サービスの提供を継続する契約を結んだと明らかにしました。グローバルスターは現在、一部の地域でiPhone 14以降の端末向けに、緊急時のテキストメッセージ送信やロードサービスの手配、位置情報の共有といった衛星サービスを提供しています。
アマゾン・レオは2028年から、独自の端末向け直接通信システムを展開する方針です。このシステムは、既存のブロードバンドや衛星システムと統合される予定です。同社は、「地球低軌道に数千機の高度な衛星」によるネットワークを構築し、「世界中の何億もの顧客端末をサポートする」という長期的な目標を掲げています。
