イスラエルのスタートアップ企業「Oak(オーク)」は、AI(人工知能)の普及に伴って複雑化する企業のID(本人確認)管理の課題を解決するため、新たなシステムを開発し、およそ6000万ドル(約93億円)の資金を調達したと発表しました。
企業におけるID管理は、かつては物理的な社員証などで十分でしたが、現在では人間とAIがデジタル環境で共に働くようになり、クラウド時代に作られた従来のシステムでも対応が難しくなっているということです。Oakはこうした課題を解決するため、組織全体のIDを統合的に管理するシステムを開発しました。このシステムはすでに一般向けに提供が開始されており、複数の企業で導入されているとしています。
古い認証情報や不適切なIDアクセス管理は、セキュリティ上の弱点となりやすく、AIの悪用によってサイバー攻撃のリスクがさらに高まると懸念されています。Oakは、限界を迎えている従来の管理ツールに代わる、AIを活用した新たなシステムを提供する方針です。
共同創業者であるタル・マロム氏によりますと、開発にあたっては、およそ100人の企業のセキュリティ責任者などと協議を重ねたということです。開発されたシステムは、実際のアプリケーションの利用状況をAIが分析し、不要になったアクセス権限を定期的な見直しを待たずにリアルタイムで削除する仕組みとなっています。
サイバーセキュリティ分野で20年以上の経験を持つ共同創業者のシャイ・モラグ氏は、「現在の管理プロセスは手作業に依存しており、リスクに基づいた対応ができていません。例えば、従業員が普段と異なる場所からログインしても、システムが自動的に反応しないなどの課題があります」と指摘しています。
モラグ氏は過去に複数の企業を立ち上げ、2023年には自身の企業を2億6500万ドル(約411億円)で売却した実績を持ちます。今回の約93億円という資金調達は、創業初期としては非常に大規模なものであり、今後は研究開発や事業拡大に集中的に投資する方針です。また、現在50人規模の従業員をさらに増やし、特にアメリカでの採用を強化するとしています。
今回の資金調達は、ベンチャーキャピタルのAccel、CRV、Greylock Partnersなどが主導しました。Accelの担当者は、モラグ氏の過去の実績を高く評価しており、「ID管理の分野は製品や組織の構造が複雑なため、経験が重要になる」と述べています。
AIを活用したID管理の分野は今後、競争が激しくなると予想されています。モラグ氏は「今回が自身にとって最後の起業になる」としており、事業の急速な拡大を目指す方針です。
