インドのIT大手「インフォシス」の元CEO、ヴィシャル・シッカ氏が設立したAI(人工知能)関連のスタートアップ企業「Hang Ten Systems(ハング・テン・システムズ)」は、初期段階の資金調達で新たに5300万ドル(約82億円)を調達したと発表しました。
同社によりますと、今回の資金調達は3200万ドル(約50億円)を集めた前回の調達からわずか5週間後に実施されたということです。これにより、設立から4か月での資金調達総額は8500万ドル(約132億円)に達しました。
今回の投資は、シンガポールの政府系ファンド「テマセク」の初期投資部門である「Xora」が主導しました。このほか、インテルのリップブ・タンCEOやマイクロンのサンジェイ・メロートラCEO、ヤフーの共同創業者であるジェリー・ヤン氏なども投資に加わっています。
今年5月に設立された同社は、年間売上高が100億ドル(約1兆5500億円)を超えるような大企業を対象に、AI戦略の立案やソフトウェアの構築を支援しています。シッカ氏は、AIの普及によりソフトウェア開発の焦点が「コードを書くこと」から「要件の定義やシステムの検証」へと移行していると指摘しています。
こうした事業戦略は顧客企業から高い評価を得ているということです。同社は、最初の面談から25日以内で数百万ドル(数億円)規模の重要なソフトウェア開発契約を締結したとしており、現在、アメリカやヨーロッパ、中東、アジアの主要企業21社と取引を進めています。顧客にはサウジアラムコやシーメンス・エナジーなどが含まれています。
調達した資金の使途について、同社はエンジニアリングやコンサルティング、営業部門の体制強化に充てる方針です。現在はアメリカ、中東、オーストラリアに20人から25人の従業員を抱えていますが、今後はヨーロッパやインドでも採用を進めるとしています。
AI市場では、開発企業や既存のコンサルティング会社との競争が激化しています。しかし、シッカ氏は「特定のプラットフォームに依存せず、企業の利益のみを追求する独立したパートナーの需要は常に存在する」と述べ、独自の立ち位置を強調しています。
同社は、独自のフレームワークを活用することで、複雑なソフトウェア開発プロセスにAIを適応させています。これにより、従来は30人規模のチームが必要だったプロジェクトを2人から4人で実行可能にし、コストや開発スピードを大幅に改善できるとしています。
設立から短期間で大手企業から買収の打診を受けたものの、同社は事業の拡大に専念するため、当面はこれらを拒否する方針を示しています。なお、シッカ氏は2019年にも別のAI企業を設立し、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2などから1億4000万ドル(約217億円)を調達した経歴を持ちます。
社名の「ハング・テン」はサーフィンの技に由来しており、企業が「AIという大きな波に乗る」ことを支援するという目標が込められているということです。
