アメリカの配車大手ウーバー・テクノロジーズの創業者、トラビス・カラニック氏が率いるロボット工学および産業用人工知能(AI)の新興企業「アトムズ(Atoms)」は、元ウーバー最高財務責任者(CFO)のゴータム・グプタ氏を同社のCFOに起用したと発表しました。アトムズは数週間前に17億ドル(約2635億円)の資金調達を行ったばかりです。
グプタ氏は、自身のソーシャルメディアへの投稿を通じてアトムズのCFOに就任したことを明らかにしました。同氏はゴールドマン・サックスの副社長を務めていた2012年にウーバーへ投資し、2013年に同社に入社しました。その後、カラニック氏がウーバーのCEOを務めていた時代に財務責任者を担当し、カラニック氏が辞任した直後の2017年7月に退社するまで、4年以上にわたりウーバーに在籍していました。
アトムズでは、かつてウーバーで活躍した元幹部らを再び結集させる動きが進んでいます。今年に入り、アトムズは自動運転技術を手がける新興企業「プロント(Pronto)」を買収しました。同社は、ウーバーやグーグルで自動運転技術のエンジニアを務めたアンソニー・レバンドウスキー氏が率いています。また、ビジネス特化型SNS「リンクトイン(LinkedIn)」の記録によれば、かつてカラニック氏と共に働いた多くの元ウーバー幹部が、現在アトムズ(旧社名:クラウドキッチンズ)に在籍しているということです。
カラニック氏は先月、17億ドル(約2635億円)の資金調達を発表した際、「今回の調達は、やり残した仕事に取り組むためのものだ。ウーバーで始まり、クラウドキッチンズで続いた『デジタルから現実世界へ』という事業の物語を、アトムズで完結させるための推進力になる」と述べ、事業の集大成としての位置づけを強調しています。同社は今後、鉱業、食品、交通などの分野で事業を展開していく方針です。また、カラニック氏は事業の目的について、「変化に対する激しい抵抗を見せる『自然』という最後の強敵に立ち向かうことだ」としています。
今回の資金調達ラウンドには、ウーバー自身も投資家として参加しています。ウーバーは2017年、相次ぐ不祥事や社内のハラスメント問題などを背景にカラニック氏を事実上追放しましたが、今回の出資により再び関係を持つことになります。ウーバーは出資額を公表していませんが、アメリカのIT系メディアなどは、その規模が1億ドル(約155億円)に上ると報じています。
グプタ氏が2020年に共同設立したベンチャーキャピタル「A*」も、アトムズに対して「ファンド史上最大規模の投資」を行ったということです。グプタ氏はアトムズのCFO職に専念するため、「A*」の業務からは退くとしています。
グプタ氏は投稿の中で、「私が参加した最大の理由はトラビス(カラニック氏)だ。彼は天才的な才能と情熱を併せ持っており、市場ではなく彼という人間に賭けたいと思わせた」と述べています。さらに、「彼は毎日誰よりも早く出社し、最後まで残っていた。規制や労働組合、行政の壁を打ち破ってきた。彼が配車サービスを切り拓いていなければ、数千億ドル(数十兆円)規模の新たな市場を無から創り出すことは誰にもできなかっただろう」とし、カラニック氏の経営手腕を高く評価しています。
