アメリカの半導体大手「エヌビディア」の競合として注目されるAIチップ開発のスタートアップ企業「Etched(エッチド)」は、自社製品の受注額が10億ドル(約1550億円)に達したと発表しました。また、企業価値が50億ドル(約7750億円)と評価されたことも明らかにし、AIの処理を高速化する専用チップの分野で事業を拡大する方針です。
発表によりますと、同社は今年、台湾の半導体製造大手TSMCによるチップの製造に成功しました。現在、顧客とともに最初の製品のテストを進めているということです。
この製品は「フロンティア推論クラスター」と呼ばれ、専用のチップやサーバーラック、ソフトウェアを組み合わせたシステムです。AIが回答を生成する「推論」の処理において、競合他社よりも高速かつ低コストで、電力効率に優れているとしています。推論処理は現在、AI企業にとって最大の課題であり、コスト増の要因となっているため、課題解決を約束する企業に投資家の関心が集まっています。
2022年に設立された同社は、これまでに総額8億ドル(約1240億円)の資金を調達したことも明らかにしました。このうち5億ドル(約775億円)は昨年12月に実施されたもので、これにより企業価値は50億ドル(約7750億円)に達したということです。
出資者には、著名な投資ファンドのほか、AI研究の第一人者であるジェフリー・ヒントン氏や、著名投資家のピーター・ティール氏などが名を連ねています。
創業者のギャビン・ウベルティ最高経営責任者(CEO)とロバート・ワチェン社長は、アメリカのハーバード大学を中退して同社を立ち上げました。2023年当時は、汎用的な画像処理半導体(GPU)ではなく、AI専用のチップが必要になるという主張が投資家に理解されず、資金繰りに苦しむ時期もあったということです。
しかし現在、AIの推論を高速化する技術への投資環境は一変しています。競合する「Cerebras(セレブラス)」が新規株式公開(IPO)を果たしたほか、「Groq(グロック)」も6億5000万ドル(約1008億円)を調達しました。さらに、アマゾンやグーグル、マイクロソフトといった巨大IT企業が自社製チップの開発を進めているほか、オープンAIも独自のチップを発表するなど、AI向け半導体をめぐる開発競争が一段と激しさを増しています。
