アメリカの人工知能(AI)向け半導体を開発する新興企業「エッチド(Etched)」は、新たな資金調達ラウンドで3億ドル(約465億円)を調達し、企業価値が103億ドル(約1兆5965億円)に達したと発表しました。
今回の資金調達はシリーズCラウンドとして行われ、アメリカのベンチャーキャピタル大手セコイア・キャピタルが主導しました。このほか、アンドリーセン・ホロウィッツや韓国のSKハイニックスなどの有力企業や投資家が参加したということです。
同社は昨年12月に5億ドル(約775億円)を調達した際、企業価値は50億ドル(約7750億円)と評価されていました。わずか7か月で企業価値が倍増したことになり、セコイアが主導するシリーズCとしては過去最高の評価額だとしています。
エッチドは先月、独自開発した半導体の製造に成功し、顧客によるシステムのテスト運用を開始したと発表しました。すでに10億ドル(約1550億円)規模の受注を獲得したとしています。
同社が開発するシステムは、特定のAIモデルに限定されるという見方もありましたが、経営幹部のロバート・ワチェン氏はこれを否定しています。「DeepSeek」や「Qwen」のような複数の専門モデルを組み合わせる手法や、「Mamba」と呼ばれる非トランスフォーマー型の設計など、あらゆるAIモデルに対応可能だということです。
さらに同社は、AIの推論処理を高速化するため、2つの新しい技術を独自に設計しました。1つは、AIが指示を読み込む「プレフィル」と呼ばれる段階を高速化する技術で、他のAIチップよりも大幅に低い電圧で動作させることで発熱を抑え、より多くのトランジスタを搭載できるとしています。もう1つは、AIが回答を生成する「デコード」の段階に向けた新しいメモリ技術です。複数のチップを接続してメモリを共有することで、高速かつ低遅延の処理を実現し、コスト削減にもつながる方針です。
エッチドは2022年にハーバード大学を中退した3人によって設立されました。創業当初は、AIに特化した半導体開発に対して懐疑的な見方も少なくありませんでした。しかし、著名なAI研究者や投資家が実際にシステムを試用したことで、高い評価を獲得したということです。
現在は400人の従業員を抱え、カリフォルニア州サンノゼの拠点に2メガワットのデータセンターを設置しています。さらに近郊のミルピタスにも10メガワットの新たな施設を開設し、世界最大規模のAI企業との連携を進めていく方針です。
