スペースXはエコースターから無線周波数帯の大部分を取得するために約170億ドル(約2兆6,350億円)を支払うことを発表しました。これは、スターリンクの直接通信サービスに向けた動きであり、スペースXが衛星から携帯電話への市場での支配を目指していることを示す最も積極的なシグナルです。
この取引の重要性は有限の資源である「スペクトラム」にあります。スペクトラムは無線信号を運ぶ周波数帯域を指し、電話やテキスト、GPS、衛星通信などに利用されます。アメリカ政府の連邦通信委員会(FCC)は、これを「バンド」に分け、限られた周波数を利用者が調整して干渉を避ける必要があるということです。
FCCは高額で長期ライセンスを民間企業にオークションで提供しており、主要な携帯電話バンドはAT&TやVerizonなどの全国的なワイヤレスキャリアが主に所有しています。一方、IridiumやGlobalstarなどの既存の衛星事業者は別のバンドを保有しています。
2024年、FCCは「宇宙からの補完的なカバレッジ」という新たな規制枠組みを承認しました。これにより、衛星事業者が地上のキャリアと提携し、既存の電話スペクトラムを使用して無線カバレッジのギャップを補完することが可能になりました。その後、スペースXは公式にT-Mobileユーザー向けに直接通信サービスを提供開始しました。
この枠組みはエコースターとの取引への道を開きました。スペースXは地上のライセンス保有者と提携する必要がなくなり、自らがライセンス保有者となることができました。スペースXはロケットや衛星を製造する企業であり、携帯電話を製造するわけではありませんが、ハードウェアメーカーやキャリアに依存しています。しかし、スペースXのCEOであるイーロン・マスク氏は、今年初めにxAIと合併した別の事業Xで携帯電話を製造する考えを示しています。
アップルはカナダのGlobalstarと提携し、緊急SOSなどの衛星機能を提供していますが、スペースXの動きがアップルをGlobalstarではなくスペースXと協力するよう説得するための圧力であると見るアナリストもいます。
スペースXは過去にもスペクトラム戦争でその力を示してきました。12GHz帯を巡ってディッシュ(エコースターの子会社)との長年の争いを成功裏に終え、AWS-4帯のライセンスを取得しました。また、スペースXとKuiperはFCCへの提出書類で干渉規則や競合する衛星メガコンステレーションのスペクトラム共有方法について争っています。
今年初め、スペースXの請願を受けてFCCは衛星共有制限を現代化するための正式な規則制定を開始しました。