アメリカ計算機学会(ACM)は、データ分析大手「データブリックス」の共同創業者で最高技術責任者(CTO)を務めるマテイ・ザハリア氏に、計算機科学分野で権威ある「ACM賞」を授与すると発表しました。ザハリア氏は受賞に際し、「汎用人工知能(AGI)はすでに存在している」との見解を示し、AIに対する人間の基準の当てはめを見直す必要があると指摘しています。
ザハリア氏は2009年、カリフォルニア大学バークレー校の博士課程において、大規模データ処理を飛躍的に高速化する技術を開発しました。この技術はオープンソースの「Spark(スパーク)」として公開され、当時のIT業界に大きな変革をもたらしました。その後、同氏はデータブリックスの技術部門を率い、同社をAI開発の基盤となる世界的なクラウド企業へと成長させています。同社はこれまでに200億ドル(約3兆1,000億円)以上の資金を調達し、企業価値は1,340億ドル(約20兆7,700億円)、年間の売上高見通しは54億ドル(約8,370億円)に達しているということです。
ACMは今週、これまでの多大な貢献を評価し、ザハリア氏に同賞を授与しました。賞金として25万ドル(約3,875万円)が贈られますが、同氏は全額を慈善団体に寄付する方針です。
現在、カリフォルニア大学バークレー校で准教授も務めるザハリア氏は、IT専門メディアの取材に対し、AIの未来についての見解を語りました。同氏は「AGIはすでに存在していますが、私たちが認識している形ではありません」と述べたうえで、「AIモデルに対して、人間の基準を当てはめることはやめるべきだ」と強調しています。例えば、人間が弁護士資格を得るには膨大な知識を統合する必要がありますが、AIは単に事実を読み込んでいるにすぎず、質問に正しく答えられるからといって、人間と同じような一般常識を持っているわけではないとしています。
さらに、AIを人間のように扱う傾向は、深刻な悪影響をもたらす可能性があると警鐘を鳴らしています。同氏は、普及が進むAIエージェント「OpenClaw」などを例に挙げ、自動で様々な作業をこなす利便性がある一方で、パスワードなどを預ける人間の助手のように設計されているため、「セキュリティ上の悪夢になり得る」と指摘しました。ブラウザにログインした状態のまま、AIが不正に資金を操作したり、ハッキングの被害に遭ったりするリスクがあるということです。
一方でザハリア氏は、研究者および技術者として、AIが生物学の実験やデータ収集などの研究活動を自動化することに強い期待感を示しています。直感的な指示でプログラミングが可能になったように、誤情報の少ないAIを活用した研究が将来的に普及していくとの見通しを示しました。
同氏は「多くの人が情報を理解する必要がある中で、AIの強みを活かすことで、私たちの生活はより良くなる」としています。将来的には、テキストや画像だけでなく、電波やマイクロ波の解析、さらには分子レベルの変化のシミュレーションなど、研究やエンジニアリングに特化したAIの検索・分析技術の発展に最も期待しているということです。
