フランスのパリに拠点を置くスタートアップ企業の支援施設「Station F(ステーション・エフ)」は、AI=人工知能分野の有望な新興企業を育成するプログラムの第2期を、今年9月に開始すると発表しました。ヨーロッパにおけるAIビジネスの登竜門としての地位を強化するねらいがあるということです。
「Station F」は、フランスの著名な実業家グザビエ・ニエル氏が設立した大規模な支援施設です。広さはおよそ5万平方メートルに及び、単なるオフィススペースの提供にとどまらない幅広い支援を行っています。
今年1月に始まったAI特化型の支援プログラム「F/ai」は、参加企業が初期の製品開発から数週間という短期間で実際の収益を上げられるよう後押しするものです。
同施設の責任者を務めるロクサンヌ・バルザ氏によりますと、毎年受け入れているおよそ1000社の中から有望な40社を選出する取り組みでは、今年、ほぼすべての企業がAIを中核事業に位置づけていたということです。また、2022年からはこうした有望企業への直接投資も行っているとしています。
「Station F」は、フランス政府が推進するテクノロジー産業育成政策の拠点ともなっており、2017年以降、マクロン大統領をはじめとする多くの要人が視察に訪れています。さらに、アメリカのオープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者など、業界の著名人との人脈も構築しており、これをプログラムの支援に活用する方針です。
プログラムの第1期には、グーグルやメタ、マイクロソフト、オープンAIなど、数多くの大手IT企業や投資ファンドが支援に加わりました。第2期からは新たに、ギットハブなどの企業も参加する予定だということです。
バルザ氏は、「主要な企業をひとつの場所に集め、ヨーロッパで事業を展開したいAIスタートアップ企業が容易に接点を持てるようにすることが目標だ」と述べています。
プログラムでは、参加企業が半年以内に100万ユーロ(約1億6500万円)の収益を上げることを目標に掲げています。ヨーロッパのスタートアップ企業は事業化のスピードが遅いという批判があることから、アメリカと同等の水準に引き上げるねらいがあるということです。
投資家からの評価も高く、第1期に参加した20社は、事業の初期段階で合わせて3400万ドル(約52億7000万円)の資金調達に成功したということです。参加企業の創業者の8割は起業経験者で、3分の1が博士号を保有しているとしています。
一方、プログラムへの参加は創業者や投資家からの推薦に限定されているため、業界の閉鎖性を指摘する声もあります。これに対しバルザ氏は、支援企業を通じて連絡を取ることが可能であるほか、施設内には他にもおよそ30の支援プログラムが用意されていると説明しています。
今後の展望についてバルザ氏は、「トップレベルの人材と交流するためにアメリカへ渡る必要はない。ヨーロッパにとどまりながら事業を成功させられることを証明したい」としており、域内での技術の自立と人材の定着を目指す方針です。
