AI(人工知能)の普及によるSaaS企業の成長鈍化が懸念される中、テクノロジー企業の買収と再建を手がけるイタリアの「ベンディング・スプーンズ(Bending Spoons)」が株式上場を果たし、取引初日の終値が公開価格を約40%上回ったと発表しました。
同社の初日の終値は40.50ドル(約6278円)となり、公開価格の29ドル(約4495円)を大きく上回りました。これにより、イタリアのミラノに本社を置く創業13年の同社の時価総額は257億ドル(約3兆9835億円)に達し、未公開企業としての最終評価額である110億ドル(約1兆7050億円)から倍増したということです。また、今回の上場で16億8000万ドル(約2604億円)の資金を調達したとしています。
ベンディング・スプーンズは、「AOL」や「エバーノート(Evernote)」、「ビメオ(Vimeo)」など、知名度はあるものの成長が停滞しているブランドを買収し、収益化を図ることで急成長を遂げてきました。具体的な経営戦略として、徹底したコスト削減や新機能の追加、価格改定などを実施する方針です。プライベート・エクイティ(未公開株投資会社)の手法と似ていますが、買収した事業を売却する計画はないとしています。
公開された財務情報によりますと、同社は買収した事業の黒字化に成功しているということです。第1四半期の売上高は6億100万ドル(約931億5500万円)、純利益は2740万ドル(約42億4700万円)だったと発表しました。前年同期は売上高2億5900万ドル(約401億4500万円)に対し、1億1200万ドル(約173億6000万円)の純損失を計上しており、大幅な業績回復を遂げたとしています。
社名はSF映画「マトリックス」のワンシーンに由来するということです。昨年の事業全体の84%をサブスクリプション(定額課金)による収益が占めています。
上場前の最大の外部株主は投資会社のベイリー・ギフォードで、その他にもフィデリティやT・ロウ・プライスなどの機関が株式を保有していました。今回の上場は、ルカ・フェラーリ氏ら5人の共同創業者にとっても多額の利益をもたらす結果になったということです。
ソフトウェア業界では、ベンディング・スプーンズのほかにも、成長が止まった企業(いわゆる「ベンチャー・ゾンビ」企業)を買収し、立て直して保有し続ける戦略をとる投資家が存在します。コンステレーション・ソフトウェアやタイニーなどの企業が、同様の事業モデルを展開しているということです。
