アメリカのIT大手、マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは、AI=人工知能を利用する企業に対し、機密データがAI開発企業に流出するリスクがあるとして、データの所有権を自社で管理するよう警告する見解を発表しました。
アメリカのIT業界では現在、AIがもたらす潜在的なリスクについて議論が交わされています。その中で特に懸念されているのが、独自のAIモデルを提供する大手開発企業が、顧客企業の機密情報を収集し、将来的に競合相手になるのではないかという問題です。
こうした中、マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは自身のブログで、AIを利用する企業は「二重の支払い」をしていると指摘しました。企業はAIの利用料を支払うだけでなく、自社の貴重なデータを無意識のうちに提供しているということです。
ナデラCEOは、「モデルの性能を高めようとすればするほど、企業は独自のノウハウを入力しなければなりません。AIモデルは、ユーザーが入力した指示や修正の履歴から学習しており、企業は競合他社が決して買えないような知識をAI開発企業に引き渡していることになります」として、強い危機感を示しています。
また、AI開発企業がインターネット上のデータを自由に収集して学習に利用している一方で、顧客企業がAIモデルの出力結果を利用して独自のモデルを学習させる「蒸留」と呼ばれる手法を制限していることについて、「偽善的だ」と批判しました。
そのうえで、解決策として、企業がデータの所有権を保持し続けることの重要性を強調しています。具体的には、自社のクラウド上に独自の学習環境を構築することや、特定のAIモデルに依存せず、複数の提供元のモデルを柔軟に切り替えられる仕組みを導入することを推奨する方針です。
現在、IT業界では、企業が自社のデータセンターで無償で公開されている「オープンソース」のAIモデルを運用する動きが広がっています。企業のAIシステム管理を支援するアメリカのソフトウェア企業などの担当者によれば、多くの企業がコスト削減とデータ管理の観点から、自社運用型のシステムへの移行を進めているということです。
オープンAIなどの大手AI開発企業に多額の投資を行っているマイクロソフトのトップが、独自のAIモデルの利用に注意を呼びかけたことで、企業が自らデータを管理し、オープンソースのモデルを活用する流れは今後さらに加速するとみられています。
