カナダの自動車部品大手「マグナ・インターナショナル」は、インドで電気自動車(EV)向けのバッテリー交換ネットワークを展開する新興企業「Yuma Energy(ユマ・エナジー)」に対し、新たに3500万ドル(約54億2500万円)を追加出資したと発表しました。
バッテリー交換方式は世界的に普及が難航しているものの、マグナ社は、二輪車や三輪車が数百万台規模で走り、配達サービスが急成長するインド市場においては、大規模な事業展開が可能だと分析しています。
ユマ・エナジーは、インドのモビリティ新興企業「Yulu(ユル)」から2023年初頭に独立した企業です。これまでに6000万回以上のバッテリー交換実績があり、現在は約10万個のバッテリーを運用しているということです。
ユマ・エナジーのムツ・スブラマニアン専務取締役への取材によりますと、マグナ社は今回の追加出資により、合弁会社設立時に取得した51%の出資比率をさらに引き上げる方針です。これにより、ユル社の持ち分(49%)は低下することになりますが、新たな出資比率の詳細は明らかにされていません。
マグナ社は2022年、ユル社に2500万ドル(約38億7500万円)、ユマ・エナジーに5200万ドル(約80億6000万円)の計7700万ドル(約119億3500万円)を出資しており、インドにおけるスタートアップ投資はこの2社のみだということです。
今回の追加出資の背景には、インドで拡大するギグエコノミー(単発の仕事を請け負う働き方)の存在があります。配達員にとって、EVの充電時間は収入減に直結します。現在、インドのギグワーカーが使用する車両のうちEVは10%から15%にとどまっており、ガソリン車からの移行が進めば、ユマ・エナジーのような事業者にとって大きな成長余地があるとしています。
スブラマニアン氏は、「稼働時間の長さが重要であり、バッテリー交換は急速充電よりも実用的だ」と強調しています。バッテリー交換が2分未満で完了するのに対し、急速充電は20分から30分かかり、複数の車両に対応するためのスペースや電力も必要になるためです。
一方で、バッテリー交換事業はインフラ整備に多額の資金を要します。ユマ・エナジーは現在、400か所以上のステーションで2500基以上の充電ユニットを稼働させており、年間売上高は約10億ルピー(約1050万ドル、約16億2700万円)に上るということです。現在はまだ赤字ですが、一部の古いステーションではすでに利益が出ており、今後半年以内の黒字化を目指すとしています。
同社は今回調達した資金の大部分をインフラの拡充に充て、今後1年半でバッテリーの保有数を現在の2倍となる約20万個に増やす計画です。
これまでは利用者の大半をユル社が占めていましたが、直近の四半期では他社の利用が15%から20%に増加しています。同社は現在、5つ以上の車両保有企業にサービスを提供し、10以上の車両プラットフォームとバッテリーを統合しています。2年後には、ユル社以外の顧客割合を25%まで引き上げる目標を掲げています。
今月には、ユル社がEV二輪車の増車に向けて9300万ドル(約144億1500万円)を調達しており、ユマ・エナジーも最大の顧客である同社の動きに合わせてネットワークを拡大する必要があります。
現在、ユマ・エナジーはベンガルールやムンバイなどインド国内の18都市で事業を展開しています。今後はチェンナイやプネーにも進出する方針です。さらに、長期的にはベトナムやタイなどの東南アジアや、アフリカの一部地域など、二輪車市場が大きい海外への展開も視野に入れているということです。
同社は単に交換ネットワークを運営するだけでなく、チェンナイの施設でバッテリーパックを、ベンガルールの施設で充電ユニットを自社で設計・製造しており、ハードウェアとネットワークの両方を自社で一元管理できる強みを持っています。
