フランスのAI企業であるミストラル(Mistral AI)は、政府や大企業向けのAI導入支援を加速させ、特定の国や企業への依存から脱却する「技術主権」の確立を目指す方針を明らかにしました。アメリカのAI企業に対する規制強化の動きなどを背景に、同社の独自の戦略と急速な成長に国際的な関心が集まっています。
アメリカのトランプ政権による指示を受け、アメリカのAI企業が最新モデルの提供を停止するなどの動きが出る中、特定の国への技術依存を減らすべきだとする声が高まっています。こうした中、フランスを拠点とするミストラルが大きな注目を集めています。
同社をアメリカのオープンAI(OpenAI)のような消費者向け企業と見なすと、実態を見誤る可能性があると指摘されています。同社のチャットボットの認知度は、アメリカ企業の製品に比べて低いのが現状です。
その一方で、ミストラルは政府や大企業に対し、それぞれの用途に合わせてAIをカスタマイズして導入する支援に注力しています。この戦略により収益は急拡大しており、年間経常収益は1年前の2000万ドル(約31億円)から4億ドル(約620億円)へと増加しました。さらに、今年は10億ドル(約1550億円)を突破する見通しだということです。
また、現在、企業の評価額を231億5000万ドル(約3兆5883億円)として、35億ドル(約5425億円)の追加の資金調達を行っていると報じられています。
アーサー・メンシュ最高経営責任者(CEO)は、同社のビジョンについて、「国家や一部の企業による中央集権的な管理から離れ、誰もが最高のAIシステムにアクセスできるようにすることだ」と説明しています。同社は今夏に新たなAIモデルを公開する予定であり、音声や画像、文書処理の分野で最先端の技術を提供するとしています。
さらに、ミストラルはインフラ関連のスタートアップ企業を買収し、独自のAIクラウドを構築する計画を進めています。フランスとスウェーデンにデータセンターを建設するため、40億ユーロ(約6600億円)の投資戦略も発表しました。これは、AI技術の安全で手頃な供給網を確保し、ヨーロッパ独自の技術基盤を強化する狙いがあるということです。
同社は、マイクロソフトやエヌビディア(NVIDIA)、半導体製造装置メーカーのASMLなど、世界的なテクノロジー企業との提携を次々と結んでいます。また、フランス政府やUAE(アラブ首長国連邦)の投資機関とともに、AIの研究拠点を設立する計画も進めています。
これまでの資金調達総額は40億ドル(約6200億円)に上ります。直近の大型調達では、ASMLなどが主導し、企業の評価額が117億ユーロ(約1兆9305億円)に達したということです。
メンシュCEOは、将来的には独自のAI半導体を設計する可能性も排除しない姿勢を示しています。また、他社による買収には応じない考えを強調しており、将来的な株式公開を目指す方針です。
