アメリカのAIスタートアップ企業「Runway(ランウェイ)」は、画像や動画、音声などの生成AIモデルの中から最適なものを自動的に選択する開発者向けツール「Runway Media Router」の提供を開始したと発表しました。同社は、単なるAIモデルの開発にとどまらず、生成メディア分野の基盤となるインフラストラクチャの構築を目指す方針です。
このツールは、今月提供が始まった開発者向けプラットフォーム「Runway Dev」を通じて利用できるということです。開発者が品質、処理速度、コストのどれを優先するかに応じて、Runway独自のモデルだけでなく、他社の多様な生成AIモデルの中から最適なものを自動的に選択します。文章を生成する大規模言語モデル(LLM)の分野では、こうした自動選択ツールは普及していますが、Runwayによりますと、画像や動画などの生成メディアに特化したものは今回が初めてだとしています。
Runwayのアンソニー・マジオ最高製品責任者(CPO)は、「開発者が多様な生成メディアモデルを簡単に組み込めるよう、総合的な窓口になるという当社の目標に合致するものです」と述べています。
今回の発表は、RunwayがAI動画生成のスタートアップ企業から、生成メディアを活用する企業向けのインフラストラクチャ提供企業へと事業を拡大する戦略の一環とみられます。現在、アドビやクラウドフレア、エクスペディアなどの企業が、Runwayのシステムを利用して自社製品にメディア生成機能を組み込んでいるということです。
生成AIモデルの数が急増する中、開発者がそれぞれの特徴を把握し評価することが難しくなっています。マジオCPOによりますと、中国製の生成モデルの人気が高まる一方で、安全保障上の懸念などから米国製のモデルを優先したいという企業のニーズにも対応できるとしています。アメリカ政府が中国のオープンAIモデルに対する規制を検討する中、こうした需要は今後さらに高まる可能性があるということです。
また、自律型AIに注力する企業にとって利用料(トークン費用)の高騰が大きな課題となる中、コストや品質に基づいたモデルの選択機能への関心が高まっています。Runwayは、自社のクリエイティブチームが培ってきた専門知識を活かし、動画の動きや画像の構図などを評価する独自のシステムを構築したとしています。この技術は、同社が5月に発表した自社製品のために構築したものを、外部の開発者向けにパッケージ化したものだということです。
現在の生成メディア市場は細分化され、競争が激化しています。Runwayが昨年12月にリリースした動画生成モデル「Gen 4.5」は、発表当時は高い評価を得ていましたが、現在の上位にはグーグルや中国のバイトダンス、アリババなどの大手企業のモデルが名を連ねています。
Runwayは、単一のAIモデルの性能だけで競争するのではなく、最適なモデルを組み合わせる「オーケストレーション層」としての地位を確立することで、市場での競争力を維持するねらいがあるということです。
共同創業者で共同最高経営責任者(CEO)のアナスタシス・ゲルマニディス氏は、「優れたモデルだけでなく、それらをどう組み合わせるかがますます重要になっています」と述べ、企業からの関心が高まっていることを強調しました。
