アメリカのスタートアップ企業「AuX Labs」は、牛を使用せずにチーズの主成分であるタンパク質「カゼイン」を生成し、本物に近い代替チーズを開発するための資金として、400万ドル(約6億2000万円)を調達したと発表しました。経営難に陥っている小規模なビール醸造所の設備を活用し、生産コストを抑える方針です。
植物由来の原料で作られる代替チーズは、これまで乳製品のチーズに比べて食感や風味が劣ると指摘されてきました。その主な原因は、チーズの骨格を作り、熱で溶ける性質をもたらす哺乳類の乳に含まれるタンパク質「カゼイン」が含まれていないためです。
これに対し「AuX Labs」は、牛に頼らずにカゼインを生成する技術を開発したとしています。同社のテッド・ジンCEOは、「チーズが溶けて伸びる性質は妥協できない要素だ」と述べています。
同社はカゼインの生成にバイオリアクター(発酵槽)を使用しますが、生産コストを乳製品と同等に抑えるため、アメリカ国内の小規模なビール醸造所(マイクロブルワリー)と連携する方針です。
アメリカでは過去数十年間で小規模なビール醸造所が約1万か所に急増しましたが、新型コロナウイルスの感染拡大以降、アルコール離れが進み、経営難に直面する施設が増加しています。ジンCEOは、「既存の設備には多くの余剰能力がある」と指摘しています。
この取り組みにより、醸造所側は新たな収益源を確保できる一方、「AuX Labs」側は巨額の設備投資を行うことなく発酵設備を利用できるということです。
同社は製品の商業化に向けて、ベンチャーキャピタルなどから400万ドル(約6億2000万円)の資金を調達しました。現在は醸造所と協力して品質基準を満たす製品を作っていますが、将来的には微生物や詳しい手順書をセットにしたキットを販売し、醸造所が独立して生産できる仕組みを構築する計画です。
この技術によって生産されるカゼインは、動物由来のタンパク質と生物学的に同一だということです。また、従来の酪農に比べて必要な土地や水が大幅に少なく、温室効果ガスの排出量を約90%削減できるとしています。
調査会社によりますと、世界のチーズ市場の規模は約1650億ドル(約25兆5750億円)に上るとされています。同社は今後、カゼイン以外のタンパク質の生成も視野に入れ、より環境負荷の低い食の供給網の構築を目指すとしています。
