アメリカの学生ローン大手「サリーメイ(Sallie Mae)」に買収された奨学金検索アプリの創業者が、同社を不当解雇などで提訴したことが明らかになりました。創業者は、同社が未成年者を含む利用者の個人情報を不適切に販売していると主張しています。
クリス・グレイ氏は2023年、自身が立ち上げたアプリ「Scholly」をサリーメイに売却しました。しかし今月、デラウェア州の上級裁判所に同社を提訴したほか、アメリカ証券取引委員会(SEC)にも内部告発を行ったということです。
訴状などによりますと、グレイ氏は買収後、サリーメイの副社長に就任しました。しかし、同社が利用者の同意を十分に得ずにデータを販売しているというプライバシー上の懸念を提起したところ、買収から1年後に解雇されたとしています。グレイ氏は未払い賃金や懲罰的損害賠償などを求めています。
Schollyは、学生が利用可能な奨学金を効率的に検索できるアプリとして、約10年前に設立されました。グレイ氏自身も低所得の家庭で育ち、奨学金検索の難しさを痛感した経験を持っています。自ら図書館のパソコンを使って約2億円(130万ドル)の奨学金を獲得した経験をもとに、年齢、地域、専攻、人種、経済状況などの基準でマッチングするアルゴリズムを開発しました。
アプリは月額約150円(0.99ドル)で提供され、その後、アメリカの投資番組への出演を機に急成長しました。利用者は500万人に達し、累計収益は約46億5000万円(3000万ドル)を記録したということです。
2023年7月、奨学金や大学進学支援の分野への事業拡大を目指すサリーメイがSchollyを買収しました。グレイ氏は当時、銀行の規制下に入ることで利用者のデータが保護されると考えていたとしています。
しかしグレイ氏によりますと、サリーメイは銀行としての厳しい規制を回避するため、Schollyの事業を金融規制の対象外となる子会社に移管したということです。現在、同アプリは「Sallie.com」という別サイトで運営されており、プライバシーポリシーには、氏名、年齢、人種、位置情報などのデータを広告ネットワークや教育機関などに販売することが明記されています。
さらに、サリーメイは今年3月、Schollyの利用者データを活用した「Backpack Media」という新たな広告ネットワークを立ち上げました。同社はこれを、若い世代にリーチしたい企業向けの新たな戦略事業と位置づけています。
こうした主張に対し、サリーメイの広報担当者は「事実無根であり、断固として争う方針です」とする声明を出し、疑惑を全面的に否定しています。
サリーメイから2014年に分離した企業「Navient」は過去に、不当な学生ローンの取り立てなどを巡り、約2868億円(18億5000万ドル)の和解金を支払う事態となっています。
グレイ氏は、買収によってアプリを完全無料化できたこと自体は後悔していないとしたうえで、「企業の幹部が声を上げ、法律や公正なビジネス慣行に沿って会社の方針を正すことができる社会であるべきだ」と述べています。
