アメリカのNASA=航空宇宙局は、新たな宇宙望遠鏡「ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡」を予定より前倒しして2026年9月に打ち上げると発表しました。宇宙観測から得られるデータが爆発的に増加する中、天文学の分野でもAI=人工知能による解析が不可欠となっており、世界的なGPU=画像処理半導体の需要逼迫に拍車をかけているということです。
NASAによりますと、新たな宇宙望遠鏡は運用期間中に2万テラバイトに上る膨大な観測データを地球に送信する見込みだということです。
現在、2021年に運用を開始した「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」からは毎日57ギガバイトの画像データが送られているほか、南米チリで年内に本格稼働する「ベラ・C・ルービン天文台」でも、毎晩20テラバイトのデータが収集される予定です。かつて主流だった「ハッブル宇宙望遠鏡」のデータ量が1日あたり1から2ギガバイトだったことと比較すると、観測データは急激に増加しています。
こうした膨大なデータを手作業で解析することはすでに困難となっており、天文学者たちはAIを活用するため、GPUの計算能力に依存する方針に転換しています。
カリフォルニア大学サンタクルーズ校の天体物理学者、ブラント・ロバートソン氏は、過去15年間にわたりアメリカの半導体大手NVIDIAと協力し、宇宙空間の解析にGPUを導入してきました。同氏は「少数の天体の観測から始まり、大規模なデータセットの解析へと進化し、現在ではGPUを活用した高速な解析が主流になっている」としています。
ロバートソン氏らの研究チームは、銀河を自動で識別するディープラーニングモデル「Morpheus(モーフィアス)」を開発しました。このAIを用いた初期の解析では、特定の円盤銀河が予想以上に多く存在することが判明し、宇宙の進化に関するこれまでの理論に新たな知見をもたらしたということです。
現在、研究チームはこのAIモデルの構造を、大規模言語モデルなどで使われる最新の技術に移行させる作業を進めています。これにより、一度に解析できる領域が数倍に拡大し、作業が大幅に効率化されるとしています。また、地球の大気によってゆがめられる地上望遠鏡の観測データを、生成AIを用いて補正する研究にも取り組んでいます。
一方で、天文学の分野でも世界的なGPUの供給不足が課題となっています。ロバートソン氏は、アメリカ国立科学財団(NSF)の支援を受けて大学内にGPUの計算システムを構築しましたが、より高度な計算を求める研究者が増える中で、設備の老朽化が懸念されています。さらに、アメリカのトランプ政権が予算案で同財団の予算を半減させる提案を行うなど、資金面での不透明感も増しています。
ロバートソン氏は「AIを用いた解析にはGPUが不可欠だ」と指摘したうえで、「大学の資源が限られる中、最先端の技術を導入するためには、研究者自身が起業家のように資金獲得に動く必要がある」と強調しています。
