アメリカ政府は、人工知能(AI)分野での優位性を確保するため、国内での半導体製造を強化する方針です。この方針の一環として、ドナルド・トランプ前大統領は、国内での半導体製造を促進するための政策を打ち出し、インテルに対する10%の株式取得を発表しました。
この株式取得は、インテルが国際顧客向けにカスタムチップを製造するファウンドリ事業の所有権が、今後5年以内に50%を下回った場合に、米政府が追加の株式を取得するという条件が付けられています。
インテルは、2021年3月にファウンドリ事業を開始し、アリゾナ州に新たな半導体製造工場を建設するために200億ドル(約3兆1000億円)を投資する計画を発表しました。その後、2022年にはカスタムファウンドリ業界の企業であるタワーセミコンダクターを54億ドル(約8300億円)で買収する意向を示しましたが、規制上の問題でこの計画は頓挫しました。
2024年には、インテルのファウンドリ事業を独立した子会社にする方針が発表されましたが、事業の進展は遅れており、大口顧客の獲得が難航しているとの噂もあります。
2024年11月、インテルは2022年のチップス・アンド・サイエンス法に基づき、78億6000万ドル(約1兆2200億円)の連邦補助金を受ける契約を結びました。
その後、CEOのパット・ゲルシンガー氏が退任し、リップ・ブー・タン氏が新しいCEOとして就任しました。タン氏は、非中核事業の売却や人員削減などを含む再建計画を進めています。2024年7月には、オハイオ州での280億ドル(約4兆3400億円)の製造プラントの縮小を発表しました。
8月には、トランプ政権がインテルの取締役会に対し、タン氏の中国との関係についての質問を投げかけました。8月18日にはソフトバンクがインテルに20億ドル(約3100億円)を投資すると発表し、その4日後に米政府がインテルへの株式取得を発表しました。
この取引により、インテルはすでに受けていた補助金を確保し、米政府はインテルの利益に沿った形での投資を行うとしています。しかし、この措置がインテルにとってどのような影響を与えるかは不透明です。