アメリカ連邦最高裁判所は、捜査機関が特定の時間と場所にいた個人の位置情報をIT企業から一括取得する「ジオフェンス令状」の合法性をめぐる口頭弁論を開いたと発表しました。デジタル時代のプライバシー保護のあり方を大きく左右する裁判として注目されています。
「ジオフェンス令状」は、警察などの捜査機関がグーグルなどのIT企業に対し、特定の時間帯に事件現場周辺にいた多数のユーザーの位置情報を提供するよう求めるものです。犯罪容疑者の特定に有効である一方、無関係な人々の個人情報まで収集されることになります。このため、人権団体などは「広範すぎる捜索であり、憲法違反である」と指摘しています。2016年以降、アメリカの捜査機関による同令状の利用は急増しているということです。
今回の裁判の焦点となっているのは、2019年に南部バージニア州で起きた銀行強盗事件です。警察はグーグルに対してジオフェンス令状を出し、事件発生時に現場周辺にあったスマートフォンの位置情報を取得しました。そのデータをもとにオケロ・チャトリー被告が特定され、禁錮11年以上の有罪判決を受けました。
被告側は「令状は特定の容疑者を示しておらず、不合理な捜索や押収を禁じる合衆国憲法修正第4条に違反する」と主張しています。一方、アメリカ政府側は「被告は位置情報の収集に自ら同意しており、令状は必要な情報の提供を求めたにすぎない」と反論しています。
口頭弁論では、9人の判事の間で意見が割れている模様だということです。専門家の間では、最高裁が令状の使用を全面的に禁止するのではなく、利用範囲を制限するなどの判断を下すのではないかという見方が出ています。判決は今年後半に言い渡される見通しです。
IT各社の対応をめぐり、グーグルは昨年、ユーザーの位置情報を自社のサーバーではなく個人の端末に保存する仕様に変更し、ジオフェンス令状への対応を停止したと発表しました。しかし、マイクロソフトやウーバーなど、依然としてサーバーに位置情報を保存している他のIT企業にとっては、今後の最高裁の判断がデータ管理の戦略や方針に大きな影響を与えるということです。
