アメリカ連邦最高裁判所は、捜査機関が特定のエリア内にいたスマートフォンの位置情報を一括して取得する「ジオフェンス令状」について、個人のプライバシー権によって保護される対象であり、データの取得には正当な捜査令状が必要であるとする判決を下したと発表しました。アメリカ国内のプライバシー保護や今後の捜査手法に大きな影響を与える見通しです。
連邦最高裁は、6対3の賛成多数で「個人は携帯電話の位置情報において、合理的なプライバシーの期待を持っている」とする判決を下しました。これにより、スマートフォンで収集された位置情報の履歴や、利用するアプリのデータにはプライバシー権が及ぶということです。
このため、警察などの捜査機関がグーグルなどのIT企業に対し、過去のジオフェンス位置情報を含むユーザーデータの提供を求める場合、裁判所の捜査令状を取得する必要があるとしています。
最高裁は、ユーザーが単にサービスを利用しただけで、グーグルのような企業に位置情報を自発的に提供したとは言えないと指摘しました。自発的に提供したデータにはプライバシーの期待が及ばないとする、いわゆる「第三者法理」は適用されないということです。
「ジオフェンス令状」とは、捜査機関が地図上で特定の範囲を指定し、その時間帯にその場所にいたすべてのユーザーの位置情報をIT企業に提供させる手法です。批判的な専門家からは、無実の人のデータも含まれるため、憲法違反にあたると指摘されていました。
今回の判決は、ジオフェンス令状の使用を全面的に禁止するものではありません。しかし、不合理な捜索や押収を禁じるアメリカ合衆国憲法修正第4条が位置情報データにも適用されることを明確にしました。捜査機関は今後、対象者が犯罪に関与したという「相当な理由」を示し、対象を絞り込んだ上で令状を請求する必要があるということです。
この裁判は、銀行強盗の罪に問われた被告が、違憲な令状によって収集された証拠が使われたとして国を訴えていたものです。被告の弁護団は、ジオフェンス令状が「まず捜索を行い、後から疑いを固める」ことを可能にしており、従来の捜査の原則から逸脱していると主張していました。
過去の裁判にどのような影響を与えるかは、現時点では明らかになっていません。アメリカ司法省の広報担当者は、コメントの求めに応じていないということです。
また、過去の裁判所が「ジオフェンス令状から得られた証拠は善意で収集された」と判断しているため、今回の判決が被告の刑期に影響を与えるとは予想されていません。最高裁は、被告の裁判で請求された捜査令状に相当な理由があったかどうか、そして有効であったかどうかを判断するのは控訴裁判所に委ねられるとしています。
IT企業の対応にも変化が見られます。位置情報の提供要請を頻繁に受けていたグーグルは、ユーザーのデータを自社のサーバーではなく、ユーザーの端末内に保存する仕様に変更する方針を打ち出しています。これにより、ユーザーのデータを引き渡すことを防ぎ、捜査機関は企業ではなくユーザー本人から直接データを取得する必要が生じるということです。一方、マイクロソフトやウーバー、ヤフーなど、他の企業も引き続きこうした令状の対象となっています。
