音楽テクノロジー企業の「GRAI」は、AI=人工知能を活用して音楽をソーシャルに楽しむ新たなサービスを開発するため、900万ドル(約13億9500万円)の資金を調達したと発表しました。同社は、AIによって音楽をゼロから自動生成するのではなく、既存の楽曲をリミックスするなどして友人と共有する新しい体験の提供を目指すとしています。
現在、多くのスタートアップ企業がAIを用いて新たな楽曲を生成する技術を提供しています。しかし、GRAIは、多くの利用者が求めているのはゼロからの楽曲制作ではなく、既存の曲をリミックスしたり、曲のスタイルを変更したりして楽しむことだと指摘しています。同社は、スマートフォン向けにリミックスアプリなどの試験的な提供を始めており、利用者がどのように音楽と関わりたいかを検証していく方針です。
GRAIのイリヤ・リアスンCEOは、「音楽は、クリエイター主導の変革が遅れている最後の主要な消費者向け分野の一つだ」と述べています。その上で、AIがアーティストやレコード会社の脅威になるという懸念に対して、生成AIによる単なる楽曲制作にとどまらない、新しい音楽との関わり方を生み出す可能性があるとしています。同社は、短い動画や友人との交流を通じて音楽を発見する「Z世代」や「アルファ世代」を主なターゲットに据えるということです。
サービスを支えるため、GRAIは独自のインフラやリアルタイムの音声処理システムを開発しています。これにより、元の楽曲のアイデンティティを保ちながら、曲をアレンジすることが可能になるということです。また、同社はアーティストやレコード会社と協力し、こうした活動を合法的なものにすることを目標としています。
リアスンCEOは、「質の低いAI生成音楽をストリーミングサービスに氾濫させるのではなく、音楽を通じた交流に焦点を当てている」と強調しています。利用者がアプリ内で楽曲をアレンジして楽しむことで、最終的にはアーティストやレコード会社に新たな著作権使用料の収入をもたらす仕組みを構築する方針です。同社はサービスの本格的な開発に先立ち、レコード会社との協議を進めており、アーティストが自身の楽曲の使用を許可するかどうかを選択できるシステムを導入するとしています。
GRAIは、以前に動画作成アプリをアメリカのIT大手に売却した実績を持つ起業家らによって設立され、現在はポーランドを拠点に活動しています。今回の資金調達は、アメリカのベンチャーキャピタルなどが主導し、複数の投資家が参加したということです。
