アメリカのIT大手アップルが発表した「Apple Watch」の新たな音声処理機能について、アメリカ国内の複数の州でプライバシー保護に関する法律に抵触する可能性があることが専門家の指摘でわかりました。音声データは厳重に保護される仕組みとなっていますが、法的な解釈が定まっておらず、今後の動向が注目されています。
アップルは先ごろ、Apple Watch向けにマイクを活用した新たなオーディオ機能を発表しました。このうち、「Live Rewind(ライブリワインド)」と「Siri Recap(Siriリキャップ)」と呼ばれる2つの機能は、周囲の会話を一時的に録音して処理するため、プライバシーをめぐる議論を呼んでいます。
アメリカの多くの州では、会話を録音する際に関係者全員の同意を必要とする法律が定められています。これらの州では、相手の認識や事前の同意なしに会話を録音することは違法とされています。
これに対しアップルは、プライバシー保護に最大限配慮した設計を行っているとしています。これらの機能は初期設定では作動せず、利用するたびに手動で有効にする必要があります。例えば「Live Rewind」は15秒間のみ作動し、録音された音声データは専用のセキュリティチップ内に隔離されます。ユーザー自身や基本ソフト(OS)、アプリ、さらにはアップル社であっても音声データにアクセスすることはできず、文字起こしや要約が作成された直後にデータは完全に消去されるということです。
しかし、アメリカの経済メディア、ブルームバーグの報道によりますと、複数の州の法律専門家は、こうした保護対策が法的にユーザーを守るのに十分かどうか不透明だと指摘しています。音声データが最終的に保存されなくても、デバイスが音声を継続的に処理するプロセス自体が、州法における「通信の傍受」とみなされる可能性があるためです。
専門家の一人は、「人間が直接データを受け取って利用するわけではないため合法に近いものの、デバイスが音声を拾って解釈している以上、違法であるという主張も成り立つ」と述べています。
今回の事態は、急速に進化するテクノロジーに法律が追いついていない現状を示しています。最終的な判断は裁判所の判例に委ねられる可能性が高いとみられていますが、仮に違法と判断された場合、法的な責任を問われるのはアップル社ではなく、機能を利用したユーザーとなるため、今後の法解釈の行方が注目されます。
