アメリカのAI開発企業「アンスロピック」は、科学研究の効率化を支援する新たなプラットフォーム「クロード・サイエンス」の提供を開始したと発表しました。新しいAIモデルを開発するのではなく、研究者が複数のツールを使い分ける手間を省き、作業プロセスを統合することに重点を置いたとしています。
アンスロピックによりますと、「クロード・サイエンス」は新しいAIモデルや生物学に特化したモデルではなく、現在一般に提供されている「クロード・オーパス4.8」などの既存のモデルを活用するということです。これは、2025年10月に発表された生命科学向けの機能をさらに発展させ、専用の作業環境として構築されたものです。
同社は、単なるAIモデルの提供にとどまらず、特定の業界における作業基盤を担う企業へと成長する戦略を掲げています。ソフトウェア開発の分野と同様に、科学分野でもワークフローに特化した製品に注力する方針です。
このプラットフォームでは、メインのAIアシスタントがプロジェクトマネージャーの役割を果たします。ゲノム解析やタンパク質構造、化学などの分野向けに用意されたツールキットや、60以上の科学データベースと連携することが可能です。さらに、作業を分担するためのサブアシスタントを作成したり、論文発表の前に引用や計算を自動で確認するファクトチェック用のAIを稼働させたりすることができるということです。
また、研究の再現性を確保する機能も備えています。3Dのタンパク質構造などの図表を生成する際、それを実行したコードや作成手順の履歴も同時に保存されます。研究者は日常的な言葉で指示を出すだけで図表やコードを修正できるため、大幅な時間の節約につながるとしています。さらに、データをアンスロピックのサーバーに送信せず、研究機関の独自のシステム上で実行することも可能だということです。
すでに、アレン研究所やカリフォルニア大学サンフランシスコ校の脳腫瘍センターなどの研究機関が導入し、分析作業の時間を大幅に短縮するなどの成果を上げているということです。
科学研究向けのAIをめぐっては、開発企業間で異なる戦略が競合しています。オープンAIは今年4月、生物学に特化したモデル「GPTロザリンド」を一部の企業向けに限定公開しました。一方、グーグル・ディープマインドは「アルファフォールド」などの独自の科学モデルを保有しており、これらを統合したプラットフォームを展開しています。アンスロピックが幅広いユーザーに作業環境を提供するアプローチをとることで、今後のAI業界における競争の行方が注目されます。
「クロード・サイエンス」は、有料プランの利用者を対象にベータ版として提供されています。アンスロピックは今後の支援策として、最大50の科学研究プロジェクトに対し、それぞれ最大3万ドル(約465万円)の利用枠を提供する方針です。生物医学研究などを対象に、2026年7月15日まで応募を受け付けるとしています。
