アメリカのIT大手「オープンAI」で事実上のナンバー2を務めるフィジ・シモ氏が、フルタイムの役職を退き、パートタイムのアドバイザーに移行すると発表しました。
アメリカの経済紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」などの報道によりますと、シモ氏は従業員向けのメッセージで、現在取得している医療目的の休職が想定より長期化していると説明しました。今後はパートタイムのアドバイザーとして会社に関わる方針です。
シモ氏は2024年にオープンAIの取締役に就任し、2025年5月にアプリケーション部門の最高経営責任者(CEO)として入社しました。サム・アルトマンCEOの直属として、事業と製品開発を統括する役割を担っていました。
シモ氏の就任に伴い、最高執行責任者(COO)や最高財務責任者(CFO)などがシモ氏の直属となる一方、アルトマンCEOは研究開発や安全性などの分野に専念する体制へ移行していました。
シモ氏は今年4月、神経系の疾患の再発を理由に休職することを公表していました。オープンAIでは最近、幹部の異動や退社が相次いでおり、経営陣の再編が課題となっています。
シモ氏は以前、アメリカの食品配達大手「インスタカート」のCEOとして2023年の株式公開(IPO)を主導したほか、IT大手「メタ」でも10年以上にわたり中核事業を率いた実績があります。オープンAIが将来的な株式公開を見据える中、シモ氏の退任により、アルトマンCEOは後任探しを迫られることになります。
シモ氏は主に消費者向け事業の成長を担っていましたが、対話型AI「チャットGPT」の利用拡大は昨年末に鈍化し、社内の収益目標を下回ったということです。これを受け、同社は競合の「アンスロピック」を追う形で、プログラミング支援ツールの開発に注力する方針に転換しています。
シモ氏の退任が報じられた同日、オープンAIは新たなAIモデル「GPT-5.6」シリーズと、文書作成などの事務作業を自動化する新機能「チャットGPTワーク」を発表しました。これらの新製品は、競合他社への対抗策として位置づけられています。
現在、オープンAIの企業価値は約8520億ドル(約132兆円)と評価されています。しかし、相次ぐ幹部の離脱により、経営陣の層の薄さが指摘されています。今後は、昨年12月に最高収益責任者(CRO)として入社したデニス・ドレッサー氏などが、より広範な役割を担う可能性があるとみられています。
また、同社はAI人材の獲得競争が激化する中、従業員の株式報酬制度を大幅に緩和し、人材引き留めに多額の資金を投じています。2025年単年で株式報酬に約60億ドル(約9300億円)を費やす見通しだということです。なお、今回の一連の幹部退任は、こうした報酬制度の変更とは無関係とみられています。
