ギリシャのミツォタキス首相は、アメリカのサンフランシスコで講演し、急速に発展するAI=人工知能が社会に与える影響について、各国政府の対応が追いついていないという認識を示しました。また、ギリシャの経済回復とデジタル化への投資を強調し、テクノロジー企業の誘致や人材の呼び戻しを進める方針を明らかにしました。
ミツォタキス首相は、起業家支援団体が主催したイベントで、約250人の投資家や企業関係者を前に講演しました。この中で首相は、ギリシャが債務を記録的なペースで返済しており、経済状況が改善していることをアピールしました。
ギリシャ政府は、EU=ヨーロッパ連合の新型コロナウイルス復興基金から受け取った約360億ユーロ(約5兆9400億円)の多くを、行政手続きのオンライン化や新たなスーパーコンピューターの構築など、デジタルインフラの整備に投資したということです。
また、ストックオプションに対する税制の見直しや労働法の緩和、海外から帰国する人材への減税措置などを導入し、テクノロジー企業が進出しやすい環境を整えているとしています。債務危機時に流出した若手人材を呼び戻すとともに、アメリカの就労ビザ取得が難しくなっている状況を背景に、ギリシャでの雇用拡大を呼びかけました。
一方、AIが社会に与える影響については、明確な解決策をまだ持ち合わせていないと率直に語りました。
ギリシャでは来年1月から15歳未満のSNS利用を禁止する方針ですが、首相はAIチャットボットの依存性の高さを踏まえ、「私たちはすでに過去の課題と戦っているように感じる」と述べ、対策が時代遅れになることへの懸念を示しました。
教育現場でのAI活用についても慎重な姿勢を示しました。教員の負担軽減や個別指導におけるAIの可能性を評価しつつも、基礎的な学習スキルを身につけるための努力がAIに置き換えられてはならないと指摘しています。
AIの基盤となるデータセンターの建設をめぐっては、世界各地で電力や水資源の消費に対する反対運動が起きていますが、ギリシャでは大きな反発はないということです。マイクロソフトやAWSなどの大規模なデータセンター建設計画が歓迎されているとしています。
さらに、AIによる雇用の喪失については、「どの政府や社会も、その変化のスピードに対する準備ができていない」と危機感を示しました。AI開発の規制については、開発者自身の懸念に耳を傾ける必要があるとし、何らかの規制は避けられないとの見方を示しました。
ミツォタキス首相は、AIに関するルール作りは主にアメリカが主導することになるとしながらも、技術者だけでなく社会学者や哲学者、歴史学者などを交えた議論の場として、ギリシャが貢献していく考えを示しました。
