アメリカのIT大手Googleは、スマートフォン「Pixel」に搭載する独自チップ「Tensor」について、AI機能の強化などを進めていると発表しました。一方で、IT専門家からは、今後の長期的な利用やエコシステムの拡大に向けて、抜本的な性能向上が必要だとする見方が出ています。
現在の「Tensor」チップは、日常的な利用においては十分な性能を持っています。しかし、将来的な課題に対応できるかどうかが焦点となっています。専門家は、Pixelシリーズの潜在能力を最大限に引き出すためには、劇的な性能向上の転換点が必要だということです。
過去のパソコン市場において、半導体メーカーのAMDは、長年にわたり競合のIntelに対して性能面で後れを取っていました。しかし、その後に発表した「Ryzen」シリーズで劇的な性能向上を果たし、市場の評価を一変させました。現在のGoogleのチップ展開も、当時のAMDと似た状況にあると指摘されています。
約15万5000円の価格帯のスマートフォンにおいて、AI機能の強調や小幅な改善だけでなく、基礎的な処理能力の向上が求められています。アメリカのクアルコムが提供する最新チップは、多くの指標でTensorを上回るAI処理能力を持っているとされています。
初期世代のTensorチップは、韓国のサムスン電子の製造技術に依存していたため、発熱や電力効率に課題がありました。その後、Googleは台湾のTSMCに製造を移行しましたが、現時点では期待されたほどの劇的な性能向上には至っていないということです。
クアルコムや競合するAppleとの性能差が年々広がることは、Googleにとってリスクになるとみられています。長時間の4K動画撮影時の発熱や、高負荷な処理において制限が生じる可能性があるということです。
さらに重要な点として、この性能差は、Googleが掲げる「7年間のOSアップデート保証」という方針に影響を及ぼす懸念があります。現在「十分」と感じられるチップ性能では、2020年代後半から2030年代初頭のオペレーティングシステムの要求水準に耐えられなくなる可能性があるとしています。端末価格の高騰に伴い、5年以上にわたって同じスマートフォンを使用することが一般的になると予想されています。
また、競合するAppleの動向も注視する必要があります。Appleは、スマートフォン向けの高性能チップをノートパソコンにも搭載し、本格的なデスクトップ環境を妥協なく稼働させることに成功しています。
Googleも、Android OSを外部モニターに接続してデスクトップ環境として機能させる基盤作りを進めています。この構想を実現するためには、SNSを閲覧する程度の性能ではなく、発熱を抑えつつパソコンとして機能するだけの処理能力が不可欠だということです。
これまでGoogleの技術者は、ソフトウェアの最適化によってハードウェアの制約を補ってきました。しかし、AI機能で性能の隙間を埋めるだけでなく、チップセット自体の性能向上が必要だということです。
TSMCへの製造移行によって、熱効率の面で安定した基盤は確立されたとみられています。今後の世代で劇的な性能向上が実現すれば、Googleはスマートフォン、タブレット、そしてデスクトップにまたがるPixelエコシステムを確立できると期待されています。妥協を排し、本格的な性能競争に乗り出す時期が来ているということです。