アメリカの宇宙開発企業「スペースX」は、ソフトウェア開発プラットフォームを手がける新興企業「Cursor(カーソル)」と提携し、次世代の人工知能を開発すると発表しました。契約には、今年後半にカーソル社を600億ドル(約9兆3000億円)で買収する選択肢も含まれているということです。
AI分野で注目を集める企業との提携や買収の可能性は、スペースXが計画しているとされる株式公開(IPO)に向けた動きの一環とみられています。投資家に対して、イーロン・マスク氏が率いる巨大なテクノロジー企業群の価値をさらにアピールする狙いがあるとしています。
両社の協力関係はこれまでも深まっていました。先週には、マスク氏が設立したAI企業「xAI」が自社のデータセンターの計算能力をカーソル社に提供し、最新のAIモデルの学習を支援すると報じられていました。また先月には、カーソル社の幹部エンジニア2人がxAIに移籍し、マスク氏の直属の部下になったということです。
スペースXによりますと、今回のプロジェクトは、カーソル社が持つ専門的なソフトウェア技術者向けの製品網と、スペースXのスーパーコンピューター「コロッサス」を組み合わせるものだとしています。このスーパーコンピューターは、高性能な半導体100万個分に相当する計算能力を持つということです。
契約では、今年後半の未公開の時期に、スペースXがカーソル社に開発費として100億ドル(約1兆5500億円)を支払うか、600億ドル(約9兆3000億円)で会社全体を買収するかを選択できるとしています。カーソル社の企業価値は急速に高まっており、去年1月時点の25億ドル(約3880億円)から、5月には90億ドル(約1兆3950億円)に上昇しました。さらに11月に23億ドル(約3565億円)を調達した際には、293億ドル(約4兆5400億円)の評価を受けており、近く500億ドル(約7兆7500億円)規模の資金調達を目指していると報じられていました。
一方で、xAIやSNSの「X(旧ツイッター)」の買収などの影響で赤字が続いているとみられ、大規模な設備投資も計画しているスペースXにとって、どちらの金額も大きな負担となります。今回の短い声明では、支払いがスペースXの株式で行われるかどうかは明らかにされていません。
今回の提携は、両社の弱点を補う側面がある一方で、課題を浮き彫りにもしています。現在、カーソル社もxAIも、「オープンAI」や「アンスロピック」などの競合他社に匹敵する独自のAIモデルを持っていません。これらの競合他社は現在、開発者向けの市場でカーソル社と直接競合しています。
カーソル社は現在も他社のAIモデルを利用してサービスを提供していますが、競合他社が独自の開発支援ツールを展開するなかで、厳しい状況に置かれています。スペースXとの提携は、独自の技術基盤を確立し、こうした外部への依存から脱却する方針を目指すものだとみられています。
