アメリカの作家で研究者のイアン・ボゴスト氏は、テクノロジーの進化による過度な利便性の追求が、人々の日常から感覚的な体験を奪っているとする見解を発表しました。近く出版される著書の中で、テクノロジー業界に対して製品開発のあり方を見直すよう提唱しています。
ボゴスト氏によると、現代社会では自動車から建物の設備に至るまで、生活のあらゆる場面で「非物質化」が進んでいるということです。同氏は、マニュアル車の減少や、全自動化された公共トイレの設備などを例に挙げ、人々が物理的な世界や感覚的な体験から切り離されつつあると指摘しています。
この変化の背景には、テクノロジー業界が主導してきた効率化や自動化の推進があるとしています。配車サービスや音楽配信などの普及により、人々の生活は全体として向上した一方で、利便性と引き換えに物質的な世界との接点が気付かないうちに失われているということです。
さらにボゴスト氏は、テクノロジー企業が利便性や効率性、規模の拡大に偏重していると分析しています。人間の身体的な経験を不要なものとみなす傾向に警鐘を鳴らし、結果だけでなく「体験そのもの」を重視した製品開発が求められていると主張しています。
一方で、失われた過去の技術を単に懐古するのではなく、現在の生活の中で感覚的な体験を取り戻すことが重要だとしています。巨大な社会システムや経済構造の変革を待つのではなく、一般の人々が日常の小さな体験に満足感を見出すことが、人間らしい生活を取り戻す鍵になるということです。
ボゴスト氏は、企業や行政のリーダーに対しても、人々に豊かな感覚的体験を提供する機会を創出するよう求めていく方針です。
