アメリカの首都ワシントン近郊で送電線のトラブルが発生した影響で、大規模なデータセンターが一斉に電力網からの供給を遮断し、広範囲で電圧の異常な上昇が起きたことが明らかになりました。AI=人工知能の普及などでデータセンターが急増する中、電力網への影響を軽減するための対策が急務になっているということです。
今週、ワシントン近郊で送電線のトラブルが発生しました。通常であれば数秒で復旧する規模のトラブルでしたが、今回は3ギガワットを超えるデータセンターがほぼ同時に電力の引き込みを停止したため、送電網の安定化に10分以上を要したということです。
IoTセンサーネットワークを運営する新興企業などのデータによりますと、この影響で、アメリカ最大の送電網運用機関である「PJM」の管内において、バージニア州北部から中西部シカゴにかけての広範囲で電圧の急上昇が確認されました。大規模な停電には至らなかったものの、各地で照明がちらつくなどの影響が出たということです。
トラブルが起きたバージニア州北部は、世界で最もデータセンターが集中している地域として知られています。専門家は、今回の事態はデータセンターが電力網に与える影響の大きさを示すものであり、今後こうした事象がさらに頻発するおそれがあるとしています。
PJMのデータによりますと、送電線のトラブル発生後、データセンターがバックアップ電源に切り替わったことで、およそ30秒間に約3.1ギガワットの電力需要が送電網から消失しました。電力網は需要と供給のバランスを厳密に保つ必要があり、需要が急激に減少したことで供給過多となり、電圧の急上昇を招いたということです。
こうした事態を防ぐための技術開発も進んでいます。新興企業の「ON.Energy」は、データセンター全体をカバーする大規模な無停電電源装置とバッテリーシステムを開発しています。このシステムを導入することで、電力網の変動をバッテリーで吸収し、送電網に負荷をかけずにAIの学習などの膨大な計算処理を継続できるとしています。同社は現在、4か所のデータセンターで合計3ギガワット相当のシステムを導入する方針です。
また、電力網を管理する機関も対策に乗り出しています。テキサス州の送電網運用機関などは、データセンターなどの大口需要家に対し、電力網の混乱時にも接続を維持して乗り切る能力を備えるよう義務付ける方針を示しています。
PJMの管内では、過去にも同様のトラブルが発生していますが、今回はその2倍の規模となりました。調査会社によりますと、PJMの電力需要に占めるデータセンターの割合は、現在の数パーセントから2040年には24パーセントに達すると予測されています。専門家は、早急に対策を講じなければ、電力網への影響はさらに深刻化するとして警鐘を鳴らしています。
