企業向けに特化したスタートアップを創出するアメリカの企業「Vantora(旧UP.Labs)」は、新たに1億ドル(約155億円)の資金調達を実施し、今後は顧客企業が独占的に利用できる物理的なAI=「フィジカルAI」の開発に注力すると発表しました。
同社は4年前、ポルシェやアラスカ航空などの企業が抱える課題を解決するためのスタートアップを立ち上げる組織として設立されました。今回、社名を「Vantora」に変更するとともに、投資会社であるシルバースミス・キャピタル・パートナーズから初めての外部資金となる1億ドル(約155億円)を調達したということです。
ジョン・クオルト最高経営責任者(CEO)によりますと、今後は開発した技術を広く一般市場に提供するのではなく、顧客企業専用のスタートアップを創出する方針へと転換するとしています。これにより、顧客企業は自ら出資して最初の利用者となるだけでなく、最終的にそのスタートアップを自社の中核事業に組み込み、技術を完全に独占することが可能になるということです。
このような戦略の転換は、同社が「フィジカルAI」分野への注力を強める背景となっています。これまで同社は、顧客企業にとって戦略的に重要であっても、機密性が高く外部に公開できないアイデアについては、開発を見送らざるを得ませんでした。
クオルトCEOは、「例えば大手工業メーカーが、自社の機械を自動化するためにシステムを改修する場合、その技術は自社で完全に管理する必要があり、競合他社への提供は認められません。これまではそうした最も価値の高い課題を取りこぼしていました」と指摘しています。
新たな方針により、既存の顧客である物流大手J.B.ハント向けのAI技術など、これまで見送られてきた大規模なフィジカルAIの活用プロジェクトを進めることが可能になったとしています。
同社は2022年にポルシェを最初のパートナーとして事業を開始して以来、複数のスタートアップを立ち上げてきました。現在では、アラスカ航空やJ.B.ハントなどの大手企業と提携を結んでおり、今後も工業製造や石油・ガス分野の新たな顧客企業と連携していく方針です。
