アメリカの投資助言会社などは、世界的なAI=人工知能のブームを背景に、富裕層の資産を管理する「ファミリーオフィス」が、ベンチャーキャピタルを介さずに直接AI関連のスタートアップ企業に投資する動きが加速していると発表しました。
これまで有望なスタートアップ企業への投資は、有力なベンチャーキャピタルが運営するファンドを通じて行われるのが一般的でした。しかし、現在では企業の未上場期間が長くなり、株式公開の件数が減少しているということです。富裕層向けの投資助言会社「アリーナ・プライベート・ウェルス」の創業者であるミッチ・スタイン氏は、「多くの利益は企業が上場する前に生み出されており、現在は未上場市場をAI関連企業が占めている」と指摘しています。
同社は最近、AIチップを開発するスタートアップ企業「ポジトロン」の2億3000万ドル(約356億5000万円)の資金調達を共同で主導し、取締役の座を獲得しました。スタイン氏によりますと、これは受動的な投資から、資本市場への積極的な参加へと方針を転換する戦略の一環だということです。
同社幹部のアリ・ショッテンスタイン氏は、「世界のAIインフラが構築されている今、早期に参入しなければ機会を逃すことになる」と危機感を強調しています。また、スタイン氏も「最大のリスクはAI投資の失敗ではなく、AIに投資しないことだ」としています。
データにもこの傾向が表れています。今年2月、ファミリーオフィスはスタートアップ企業に対して41件の直接投資を行いましたが、そのほぼすべてがAIに関連するものでした。金融機関大手の調査によりますと、ファミリーオフィスの83%が今後5年間の最優先戦略としてAIを挙げており、半数以上がすでにAI関連への投資を行っているということです。
さらに、自らAI企業を立ち上げる動きも広がっています。アマゾンの創業者であるジェフ・ベゾス氏がみずからのロボット企業のCEOに就任した事例では、昨年、およそ300億ドル(約4兆6500億円)の企業価値評価に対し、初期資金として62億ドル(約9610億円)を調達しました。また、半導体企業の元CEOであるタイソン・タトル氏も、AIを活用する企業を共同で設立し、3000万ドル(約46億5000万円)を調達しました。このうち500万ドル(約7億7500万円)は、自身のファミリーオフィスから出資したということです。
一方で、投資にあたっては厳格な審査が行われています。アリーナ社は、ポジトロンへの投資に際して第三者の専門家と協力して技術を検証したほか、大手企業が関与していることを高く評価したとしています。一般的なベンチャーキャピタルが複数の企業に分散して投資するのに対し、同社は年間数件の直接投資に集中する方針です。スタイン氏は「失敗を前提とせず、多大なリスクとリソースを投入している。この姿勢が起業家からも評価されている」と述べています。
