世界の富裕層の資産を管理する「ファミリーオフィス」の間で、人工知能(AI)関連企業への投資が急速に拡大していることが明らかになりました。従来のファンドを経由した投資から、未公開株を直接購入する手法へとシフトしており、短期間での高いリターンを狙う動きが強まっているということです。
アメリカ・サンフランシスコの資産管理プラットフォーム「アトラス・キャピタル」の専門家によりますと、現在の投資環境において、ファミリーオフィスは長期的な投資よりも、短期間で利益を数倍にできる可能性のあるAI関連の取引を優先する傾向にあるとしています。
注目される変化として、従来のベンチャーキャピタルに資金を預ける手法から、既存の株主から未公開株を直接買い取る「セカンダリー市場」での取引や、直接投資への移行が進んでいることが挙げられます。これにより、投資家は資金のコントロールを長期間手放すことなく、成長著しい企業に投資できるということです。
コンサルティング大手デロイトが2024年にまとめた報告書によりますと、世界のファミリーオフィスの運用資産総額は5兆5000億ドル(約852兆5000億円)に上り、2030年までに少なくとも9兆5000億ドル(約1472兆5000億円)に達すると予測されています。
また、金融大手UBSの報告書では、平均純資産27億ドル(約4185億円)のファミリーオフィスにおいて、未公開株やベンチャーキャピタルなどの代替投資がポートフォリオの42%を占めていることが分かりました。リスクを取ってでも、より高い収益が見込める資産へ資金を振り向ける方針が浮き彫りになっています。
過去にもファミリーオフィスによる直接投資が急増し、その後金利上昇などの影響で後退した時期がありました。コンサルティング大手PwCの調査では、2021年に直接投資の取引額が世界で約1兆500億ドル(約162兆7500億円)に達したものの、その後急速に減少したということです。しかし現在、AIブームを背景に再び投資熱が高まっています。
市場では、オープンAIやアンスロピックといったAI開発企業の株式が特に高い人気を集めています。専門家によりますと、5000万ドルから1億ドル(約77億5000万円から155億円)規模の資金をアンスロピックに投資したいという要望が相次いでいるということです。
金融大手JPモルガンの報告書でも、世界のファミリーオフィスの65%が「AI投資を優先する」と回答しています。UBSの専門家は、「地政学的な緊張や景気後退リスクがある中で、投資家はAIを長期的な成長機会と捉え、投資を維持する方針です」と指摘しています。
一方で、AIブームがバブルである可能性を懸念する声も上がっています。市場関係者は、「もしバブルが崩壊すれば、株式市場全体に影響が及ぶことは誰もが理解しているものの、投資家は依然として高いリターンを求めている」と分析しており、今後の動向が注目されます。
