アメリカのIT専門メディアは、アメリカ政府が最先端の人工知能(AI)モデルの公開に対して、事実上の事前承認制を導入する方針であると発表しました。AI開発企業のオープンAI(OpenAI)やアンスロピック(Anthropic)の最新モデルが相次いで公開制限を受けており、開発競争や業界全体に深刻な影響を及ぼす懸念が高まっているということです。
報道によりますと、オープンAIが開発した最新モデル「GPT 5.6」は、限定的なプレビュー版としての公開にとどまる見通しだということです。一般公開が承認されるまでは、顧客ごとにアメリカ政府の承認が必要になるとされています。これに先立ち、アンスロピックの最新モデル「Fable」や「Mythos」も政府の介入により公開が制限されています。
オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)は、審査期間は「数週間程度」との見通しを示しているということです。しかし、アンスロピックのモデルはすでに数か月にわたってプレビュー状態が続いており、一般公開のめどは立っていません。AI開発企業が収益の改善を急ぐなか、審査の長期化は巨額の投資を行った新システムの経済的利益を大きく損なうとみられています。また、開発の遅れは、現在進められているデータセンターの建設ラッシュにも冷や水を浴びせる可能性があると指摘されています。
現在、オープンAIとアンスロピックは全く同じ課題に直面しています。IT業界内では、アンスロピックが自社に有利な規制を誘導したとする見方や、オープンAIが次期政権に接近して競合他社を排除しようとしているといった非難の応酬が起きています。これは、業界の有力者たちが特定の企業に数十億ドル(数千億円規模)の巨額投資を行っているためだとみられています。
しかし、事態は個別の企業の枠を超えた問題となっています。すべての最先端AIモデルに対して、政府の場当たり的な承認プロセスを導入することの代償は大きく、業界全体での対応が求められています。当面の最大の課題は、合理的な公開プロセスを確立することです。政府が公開前にモデルの安全性をテストすること自体は一般的な手法ですが、規制当局を納得させるための具体的な基準は示されていません。アメリカ政府には高度なAIを検証するための専門知識や体制が不足しており、どのようなリスクを防ごうとしているのかも明確ではないということです。
一方で、政府の規制強化の背景には、AI技術がサイバーセキュリティや生物兵器のリスクなどを劇的に変化させているという深刻な懸念が存在します。専門家は、公開制限だけでは根本的な解決にはならないものの、これらのリスクには適切に対処する必要があるとしています。
今後の対応策として、AI業界全体が協力して取り組む方針が不可欠だということです。独立した第三者機関の評価を受け入れ、実現可能な規制案を支持することが求められています。AIモデルの能力が現実の政治や社会に重大な影響を与えるレベルに達しているなか、安全性や規制を企業間の競争に利用するのではなく、業界全体で集団的な行動を起こせるかが今後の焦点となる見通しです。
