アメリカの専門機関などは、膨大な水を消費するAIデータセンターの環境負荷を軽減するため、下水などを処理した再生水の利用が拡大していると発表しました。IT大手によるインフラ投資や政策支援の動きも本格化しているということです。
アメリカの飲料メーカー「リキッド・デス」は最近、AIデータセンターの冷却に人間の尿を使うよう呼びかける、冗談を交えた広告動画を公開しました。専門家によりますと、これはあくまで広告キャンペーンであるものの、データセンターの冷却に尿を含む下水を処理した再生水を利用することは、すでに現実の対策として進められているということです。
水処理技術を手がける企業「エコラボ」の担当者は、「実際には、データセンターの冷却に代替水源がかなりの規模で利用されています」と指摘しています。代替水源を利用することで、飲料水の消費を抑えることができるとしています。
アメリカ環境保護局(EPA)の元幹部で、水再利用協会の責任者を務めるブルーノ・ピゴット氏は、「尿をそのまま使うわけではなく、浄化して有用な水に変えることを推奨しています」と述べています。尿をそのまま冷却塔に投入すると、塩分やバクテリアなどが蓄積し、蒸発冷却の過程で悪臭が発生するため、現実的ではないということです。
そのため、水処理施設が重要な役割を果たしています。これらの施設では、特殊な膜や逆浸透圧、紫外線などを用いて、工業用水として利用できる水準まで下水を浄化しています。エンジニアリング会社の専門家によりますと、データセンターの増加に伴い、冷却用の再生水に対する需要が急増しているということです。
一方で、課題も浮き彫りになっています。再生水を利用するには、大規模な下水処理施設が近くにある必要があります。アメリカの首都ワシントン近郊のバージニア州ラウドン郡には250以上のデータセンターが集中しています。2025年の時点で、これらの施設は1日あたり約2億ガロンの再生水を利用していますが、これは全体の水消費量の43%にとどまり、残りの57%(約2億6000万ガロン)は依然として飲料水に依存しているということです。
こうしたインフラの課題を解決するため、IT大手も投資を進めています。メタ(Meta)は、データセンター周辺の下水インフラ・プロジェクトに少なくとも2億7000万ドル(約418億5000万円)を投資する方針です。なお、同社は仮想現実(VR)関連部門で四半期ごとに約40億ドル(約6200億円)の赤字を計上しています。
政策面では、ピゴット氏らが、産業界による再生水インフラの整備を支援するため、30%の税額控除を設ける法案の成立を働きかけているということです。
最近の世論調査によりますと、アメリカ人の約7割が地域へのデータセンター建設に反対しており、AI開発に伴う環境負荷への懸念が高まっています。ピゴット氏は、「水問題への関心が高まることは歓迎すべきであり、現在の取り組みを一般の人々に理解してもらう良い機会になる」としています。
