アメリカのAI開発企業「オープンAI」の元研究者が設立したヘッジファンド「シチュエーショナル・アウェアネス」は、過去1か月の運用成績の悪化を受け、保有する上場株式の大部分を大手ヘッジファンドの「シタデル」に売却したと発表しました。一方で、有力AI企業「アンスロピック」などの未公開株は引き続き保有しているということです。
同ファンドを2024年に設立したのは、ドイツ出身のレオポルド・アッシェンブレンナー氏(25)です。同氏は、AIの規模拡大には半導体やインフラへの大規模な投資が必要だとする論文を発表し、注目を集めました。2023年にオープンAIに入社しましたが、内部情報の不適切な開示を理由に解雇され、その後自身のファンドを立ち上げたということです。
ファンドの運用成績は当初好調で、今年6月までの1年間で439%のリターンを記録したと報じられています。運用資産残高はピーク時に最大450億ドル(約6兆9750億円)に達しました。しかしその後、AIインフラ関連の投資が全体的に落ち込む中で、保有資産の価値が急落したとしています。
ファンドが保有していた半導体メーカーの「SKハイニックス」やクリーンエネルギー開発の「ブルーム・エナジー」などの株価が、過去1か月で30%以上下落しました。巨額の設備投資が短期的な収益に結びついていないとの懸念が市場に広がったことが要因とみられます。さらに、借入金を活用するレバレッジ取引を行っていたため、損失が拡大したということです。
損失の拡大を受け、ファンドは保有する上場株式の大部分を、ケン・グリフィン氏が率いる「シタデル」に売却しました。この結果、ファンドの運用資産は直近の約200億ドル(約3兆1000億円)から約100億ドル(約1兆5500億円)に減少したと報じられています。シタデルは、相場の下落時に有望な資産を買い入れる戦略をとっており、AIインフラ分野の回復を見込んでいるとみられています。
一方で、ファンドは未公開企業への投資は売却していないということです。特に、競合するAI企業「アンスロピック」の株式を約50億ドル(約7750億円)相当保有し続けているとされています。アンスロピックの企業価値は今年5月の資金調達ラウンドで9650億ドル(約149兆5750億円)と評価されており、早ければ今年10月にも新規株式公開(IPO)を行う見通しです。この未公開株の利益によって、上場株式での損失の一部を相殺できる可能性があるとしています。
また、ファンドはAIデータセンターの新興企業「フルイドスタック」(評価額180億ドル=約2兆7900億円)や半導体企業「MatX」などの未公開株も保有しているということです。
