対話型AIの開発に携わった元研究者が設立したスタートアップ企業「TypeSafe AI」は、文章ではなく確率を出力する新しいAIモデル「Jev」を開発したと発表しました。ソフトウェアの自動化に特化し、低コストで高速な処理が可能になるということです。
このモデルを開発したのは、アメリカのAI開発企業「OpenAI」の元研究者であるディオゴ・アルメイダ氏です。同氏は、現在のAI技術の基盤となる学習手法の開発に貢献したものの、従来のAIが人間の言語に最適化されすぎているため、コンピュータによる自動化処理には適していないという課題を指摘していました。これを解決するため、2年前に同社を退社し、新たな企業を設立したということです。
今週発表された新モデル「Jev」は、一般的な大規模言語モデルとは異なり、テキストを出力しません。代わりに、企業が「調整された意思決定」と呼ぶ「確率」を出力します。言語処理の工程を省くことで、非常に安価で高速な処理を実現したとしています。また、出力結果が事前に定義されるため、AIが事実と異なる情報を生成する「ハルシネーション」を防ぐことができるということです。
この新技術は、ソフトウェア開発者の間で大きな関心を集めています。提供開始直後にはアクセスが急増し、一時的にサービスが停止するほどの反響があったということです。実際に導入した企業のエンジニアは、安全性の確認作業において従来のモデルからJevに切り替えた結果、処理速度が5倍から18倍に向上し、精度も高まったと報告しています。また、別の企業の技術責任者は、Jevが正確な確率を提示するため、業務の自動化に最適だと評価しています。
Jevは、特定の業務において大規模言語モデルを置き換えるだけでなく、他のAIの誤作動を監視する役割や、作業内容に応じて適切なAIモデルを割り当てるシステムなどにも活用できると期待されています。アルメイダ氏は、AIの処理コストが下がることで、高度なソフトウェアが社会に広く普及していくとの見方を示しています。
同社は、Jevの学習に独自の合成データのみを使用していることを明らかにしており、今後はこのデータ生成技術を強みとして、新たな形式のモデル開発を進める方針です。アルメイダ氏は、「私たちの主な製品は『知能』でありたい」と述べ、過度な期待をあおるのではなく、実用性を重視したAI開発を推進していく姿勢を強調しています。
