アメリカの宇宙開発企業「スペースX」は、株式上場後初となる決算説明会を開催し、今後の事業見通しや収益目標について発表しました。説明会では、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が野心的な目標を次々と掲げる一方で、他の経営幹部が現実的な見通しとして補足説明を行う場面が目立ち、上場企業としての情報発信のあり方が注目されています。
決算説明会は先日開催されました。マスクCEOはこれまでも大胆な予測を行ってきましたが、今回は上場企業として初めての説明会であり、経営幹部たちが投資家に向けて慎重な表現で補足する姿が浮き彫りになりました。
マスクCEOは、同社の衛星インターネット通信網「スターリンク」について、「10年以内に世界のインターネット通信の過半数を担うことになる」との見通しを示しました。これは、従来よりも通信帯域が大幅に向上した次世代衛星「V3」の打ち上げに向けた発言です。
これに対し、グウィン・ショットウェル最高執行責任者(COO)は、「V3衛星によって提供できる容量は大幅に増加し、今後数年間で世界のインターネットトラフィックの重要な部分を占めるようになる」と述べ、より現実的で法的なリスクを抑えた表現にとどめました。
また、AI(人工知能)企業向けに計算能力を貸し出すクラウドサービス事業についても、経営陣の間で見解の相違が見られました。
ブレット・ジョンセン最高財務責任者(CFO)は、「第3四半期の最初の数週間で、新たに67億ドル(約1兆385億円)の契約を結んだ」と発表しました。そのうえで、「今年の12月末までに、年間経常収益(ARR)が1000億ドル(約15兆5000億円)に達する軌道に乗っている」と慎重に説明しました。
しかし、その20分後にマスクCEOは、「12月時点での1000億ドルのARR達成は確実であり、何もしなくても達成できる数字だ。おそらくさらに高くなるだろう」と述べ、CFOの慎重な見立てを大きく上回る強気な姿勢を示しました。
さらにマスクCEOは、全体の売上高が1兆ドル(約155兆円)に達する時期について、新規株式公開(IPO)時の資料で示していた2031年から2030年に前倒ししたことを明らかにしました。「2029年に達成する可能性もゼロではない」としています。
NASA(アメリカ航空宇宙局)の月探査「アルテミス計画」に向けた大型宇宙船「スターシップ」の開発についても、マスクCEOは「来年末までに有人飛行の準備が整い、1日に1回以上の頻度で打ち上げを行う」と主張しました。また、大気圏再突入時の課題とされていた熱シールドについても、「現時点で解決したと考えている」と述べています。
これを受けてショットウェルCOOは、「NASAが定めるマイルストーンの達成に注力しており、2028年の月面着陸を目指している」と補足し、軌道修正を図りました。
スペースXは現在、上場企業として証券取引委員会(SEC)などの規制対象となっています。しかし、アメリカ国内では企業に対する規制当局の監視が弱まっている傾向にあります。また、同社はテキサス州で法人化しているため、投資家からの民事訴訟のリスクを抑えやすい構造になっているということです。
