高精度のテキスト翻訳サービスで知られるドイツの「DeepL」は、オンライン会議や対面での会話向けに、音声をリアルタイムで翻訳する新たなサービス機能の提供を始めたと発表しました。
同社によりますと、今回発表されたサービスは、オンライン会議やスマートフォン、ウェブ上での会話のほか、現場で働く従業員向けのグループ会話など、さまざまな場面で利用できるということです。また、外部の開発者や企業が、コールセンターなどの用途に合わせて独自のシステムを構築できるAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)の提供も開始しました。
DeepLのヤレク・クティロフスキーCEO(最高経営責任者)は、メディアのインタビューに対し、「長年テキスト翻訳に取り組んできた私たちにとって、音声への展開は自然な流れでした。リアルタイムの音声翻訳において、優れた製品がまだ存在しないと考えていました」と述べています。そのうえで、リアルタイム翻訳の開発においては、音声が発せられてから翻訳されるまでの遅延を減らすことと、正確な翻訳結果を維持することの両立が課題だったとしています。
同社は、「Zoom」や「Microsoft Teams」といったオンライン会議システム向けに追加機能の提供を始めています。利用者は、ほかの参加者がそれぞれの母語で話す内容を、リアルタイムの音声翻訳で聞くか、画面上の翻訳テキストで確認できるということです。この機能は現在、事前の登録制で試験的に提供されています。
また、対面や遠隔での会話に対応したモバイルおよびウェブ向けの製品や、研修やワークショップなどの場でQRコードを読み取って参加できるグループ会話機能も用意されています。さらに、業界特有の専門用語や企業名、人名などの独自の語彙を学習し、適応することも可能だとしています。
クティロフスキーCEOは、AI(人工知能)が今後のカスタマーサービスのあり方を大きく変えると指摘しています。翻訳機能の導入により、対応可能なスタッフの確保が難しく、人件費が高い言語であっても、企業が顧客サポートを提供しやすくなるということです。
同社によりますと、現在のシステムは、音声を一度テキストに変換して翻訳したのち、再び音声に戻す仕組みを採用しています。長年培ってきたテキスト翻訳の技術があるため、翻訳の質において優位性があるとしています。一方で、将来的にはテキスト変換の工程を完全に省いた、直接的な音声翻訳モデルを開発する方針です。
音声翻訳の分野では、資金力のある新興企業との競争が激しくなっています。コールセンターのオペレーター向けに、AIを使ってアクセントをリアルタイムで変換する技術を開発する「Sanas」は、昨年6500万ドル(およそ100億7500万円)の資金を調達しました。また、アラブ首長国連邦のドバイに拠点を置く「Camb.AI」は、メディア企業向けに動画の吹き替えや多言語化を支援しています。さらに、話者の声質と発言の意味の両方を維持するリアルタイム音声翻訳エンジンを開発する「Palabra」など、DeepLと直接競合する企業も台頭しています。
