アメリカの自動車大手フォード・モーターは、2027年に発売予定の次世代電気トラックの名称を「ファゾム(Fathom)」とし、販売価格を2万8350ドル(約439万円)からとすることを発表しました。
輸送費などを含めた価格は2万9945ドル(約464万円)となります。これは、フォードが2025年にこのプロジェクトを公表して以来、目標としてきた3万ドル(約465万円)を下回る価格設定だということです。
この新型トラックは、フォードにとって大きな挑戦となります。同社にとって「F-150ライトニング」に次ぐ本格的な電気トラックとなりますが、他の自動車メーカーと同様に、かつて掲げていた野心的な電気自動車の製造計画を大幅に縮小している中での投入となります。
「ファゾム」は、フォードの新たな「ユニバーサルEVプラットフォーム(UEV)」を採用する最初の車両となります。このプラットフォームは複数の異なる電気自動車に適用され、コスト削減を目的とした全く新しい組み立て工程を導入するとしています。
ジム・ファーリー最高経営責任者(CEO)は、市場を牽引するテスラや、アメリカ市場への参入を警戒する中国の電気自動車メーカーに対抗する狙いがあるとしています。なお、製造はケンタッキー州ルイビルの工場で行われる方針です。
納車は2027年秋に開始される予定です。フォードは、予約受け付けを開始する2027年初頭まで車両の全容を公開しない方針を明らかにしました。
基本ソフト(OS)にはアップルの地図アプリが組み込まれるほか、Android AutoやApple CarPlayにも対応するということです。ただし、アップルの次世代システムには対応しないとしています。
座席数は5席で、トヨタの「RAV4」よりも広い車内空間を確保しています。さらに、高解像度の大型タッチパネルやデジタルキーを備えるほか、双方向の電力供給が可能になるということです。
また、すべての車両に高度な運転支援システム「ブルークルーズ」の技術が搭載されます。ハンズフリー機能を利用するには追加料金が必要になる見通しですが、将来的には出発地から目的地までの監視付き自動運転が可能になるとしています。さらに、2028年にはドライバーが前方を注視しなくてもよい「アイズオフ」運転の実現を見込んでいるということです。
なお、最低価格のモデルには標準的な航続距離のリン酸鉄リチウムイオン電池が搭載されます。1回の充電で走行できる距離については、現時点では公表されていません。
「ファゾム」という名称について、フォードは「このトラックを運転する人への深い理解」を表していると説明しています。従来のトラック顧客とは異なる動機を持つ層をターゲットにしており、「単に響きが良いだけでなく、性能から適応力へと焦点を移す考え方を捉える必要があった」としています。
アメリカ市場において、電気トラックの販売は必ずしも好調とは言えません。「F-150ライトニング」の販売台数は最も好調な四半期でも1万台を少し上回る程度でした。テスラの「サイバートラック」もピーク時以降は販売が失速しています。
フォードが新しいプラットフォームの第1弾としてトラック型を選択したことは、大きな賭けとなります。しかし、このプラットフォームを採用する車両は、フォードが電気自動車専用としてゼロから設計した初のモデルとなります。これにより、航続距離や効率性、車両全体の設計における妥協が少なくなるという利点があるということです。
「ファゾム」と新プラットフォームの開発は、数年前から極秘プロジェクトとして進められてきました。ファーリーCEOが元テスラ幹部に率いるよう指示したもので、リビアンやテスラ、アップルの自動車プロジェクトの優秀な人材が集められています。開発チームは社内の官僚主義から切り離され、ロサンゼルスで独立して作業を進めてきたとされています。
こうした取り組みが、新車の平均価格が5万ドル(約775万円)とされる市場において、3万ドル(約465万円)を切る価格設定の実現に貢献したとみられます。この価格帯では競合が少なく、実質的には一部の新興メーカーのピックアップトラックや、小型の電気自動車に限られる見通しです。
フォードはこれまで、ガソリン車とハイブリッド車を展開する小型で低価格のピックアップトラック「マーベリック」で大きな成功を収めてきました。「ファゾム」は、既存の電気トラックの苦戦を繰り返すことなく、その成功の再現を目指す戦略だということです。
