アメリカの自動車大手フォード・モーターは、新型の電気自動車(EV)ピックアップトラック「Fathom」の価格を約464万円(2万9945ドル)からに設定したと発表しました。
フォードは歴史的に「モデルT」や「トーラス」、「F-150」などの大ヒット車に依存する傾向が強いとされています。しかし近年は、記録的なヒットとなる新車を生み出せていないということです。2025年のアメリカ国内での販売台数は、前の年と比べて6%増加し208万台となりましたが、ピークだった2000年の448万台と比べると半分以下の水準にとどまっています。
こうした中、フォードのジム・ファーリーCEOは、近く投入する新型EV「Fathom」が状況を打開する鍵になるとしています。新たなEVプラットフォームの導入を「モデルTの瞬間」と呼び、急速に世界市場を拡大している中国のEVメーカーに対抗する方針です。
今回発表されたFathomの最低価格は配送手数料込みで約464万円(2万9945ドル)となり、アメリカにおける新車の平均価格である約775万円(5万ドル)や、EVの平均価格である約868万円(5万6000ドル)を大幅に下回る水準です。また、販売店での平均的な価格帯よりも約78万円(5000ドル)安く、価格面での競争力は高いとみられています。
一方で、消費者が価格だけで購入を決定するわけではないため、いくつか課題も指摘されています。Fathomは小型のピックアップトラックですが、この市場はフォードが2021年に「マーベリック」を発売するまで、あまり注目されてきませんでした。マーベリックの昨年の販売台数は15万5000台と好調でしたが、かつてピーク時にその2倍以上を売り上げた「トーラス」のような爆発的な規模には達していません。
Fathomは、車内の広さや、エンジンがないことで実現した前部の収納スペースなど、従来の車にはない利点があるということです。しかし、自動車市場の需要は依然としてSUV(多目的スポーツ車)に集中しています。調査会社によりますと、購入検討者の70%以上がSUVを求めているのに対し、ピックアップトラックを希望する人は33%にとどまっています。
さらに、ピックアップトラックの愛好家は力強いデザインを好む傾向がありますが、現在のところFathomはそのようなデザインを強調していないとみられています。また、ガソリン車からEVへの乗り換えに対する消費者の抵抗感も根強く残っています。
フォードは今後、マーケティングや販売店への教育に投資し、EV普及の壁を乗り越える方針です。また、より力強いデザインの派生モデルを投入することも確実視されています。
Fathomがかつての大ヒット車に匹敵するかは不透明ですが、専門家の間では、同社が必ずしもそれを求めているわけではないという見方もあります。フォードにとってFathomは、新たな生産プロセスやプラットフォームの試験的な位置づけである可能性が指摘されています。小型トラック市場の堅調な需要を取り込みながら技術を洗練させ、将来的には需要の大きいSUVなど他の車種へ展開するための基盤作りを狙っているとみられています。
