イタリア・ミラノに本社を置き、IT企業の買収を幅広く手がける「ベンディング・スプーンズ」は、アメリカのナスダック市場に株式を上場したと発表しました。上場時の時価総額は180億ドル(約2兆7900億円)を超え、初日の終値は公開価格を40%上回ったということです。
同社は過去10年間にわたり、AOLやビメオ、エバーノートなど、知名度は高いものの経営課題を抱えるインターネット関連企業を次々と買収してきました。共同創業者で最高製品責任者を務めるマッテオ・ダニエリ氏は、買収した企業を短期的に転売するのではなく、最新の技術を導入してサービスを改善し、長期的に保有する方針を示しています。
買収後の大規模な人員削減については議論を呼ぶこともありましたが、同社は収益の成長を実現してきたとしています。特に人工知能(AI)の活用が大きく貢献しており、ダニエリ氏は「過去1年半で、新機能の提供や利用者への価値創出のスピードが劇的に加速した」と述べています。
同社の戦略の根底には、創業メンバーが過去に経験した事業の失敗があります。ダニエリ氏によれば、起業家の能力と事業の成功は必ずしも一致せず、「運」が大きな要素を占めることに気づいたということです。そのため、同社は「運が成長や成功に与える影響を可能な限り減らす戦略」を追求するようになったとしています。上場申請書類でも「卓越した業務遂行を追求するうえで、運は無関係である」と記されています。
この哲学は、製品の価格設定などにも反映されています。高度なデータ分析を活用し、口コミを広げるために無料機能を増やす一方で、既存の利用者に対して値上げを行うこともありました。値上げに対する不満の声が上がることもありましたが、顧客の定着率は極めて安定しているということです。
同社が特に成果を強調しているのが、メモアプリ「エバーノート」の買収です。AIを大幅に取り入れたアップデートを実施し、当初は厳しい評価を受けたものの、最終的には多くの利用者から高く評価されるようになったとしています。
また、同社は人材の採用と育成にも注力しています。AIの進歩も後押しし、従業員1人当たりの収益は、2023年の112万ドル(約1億7000万円)から、2025年には257万ドル(約4億円)へと大幅に増加したということです。
上場前の資金調達ラウンドでは、企業価値が110億ドル(約1兆7050億円)と評価され、著名な投資家からも支援を受けてきました。ダニエリ氏は、上場によって得た資金を活用し、ソフトウェア企業の評価額が低下している現在の市場環境を好機と捉え、さらなる企業買収を進めていく方針です。
