イギリスのロンドンを拠点とするテクノロジー専門の動画配信メディア「ヨーロピアン・テクノロジー・ネットワーク(ETN)」は、160万ドル(約2億4800万円)の資金調達を実施し、6月27日から番組のライブ配信を週5日に拡大すると発表しました。ヨーロッパのテクノロジー業界の急速な発展を背景に、情報発信の強化を図るとしています。
ETNは、ルーク・ナイト氏とローナン・チェンバース氏が昨年10月に立ち上げたメディアです。これまで週2回のライブ配信を通じてテクノロジー関連のトレンドやニュースを解説しており、X(旧ツイッター)やYouTubeでの総再生回数は500万回を超えているということです。
同社は今回、メディア業界の有力企業などからシードラウンド(創業初期の資金調達)で160万ドル(約2億4800万円)を調達したと発表しました。出資者には、投資会社のパワーハウス・キャピタルや、ビジネス・インサイダーなどを傘下に持つアクセル・シュプリンガーのほか、オープンAIやディープマインドの関係者などが含まれています。
この資金を活用し、ETNは事業を大幅に拡大する方針です。ロンドンにおけるAI関連の新興企業が集積するキングスクロス地区の大型スタジオへ移転するほか、現在8人のチームを拡充し、ニュースレターの創刊も予定しています。また、週5日となる新たな配信スケジュールでは、投資会社のセコイア・キャピタルの幹部や、イギリスの元首相で現在はAI企業の顧問を務めるリシ・スナク氏などをゲストに迎える予定だということです。
ETNはすでに、ヨーロッパの新興企業にとって重要な広報の場となっています。これまでに、イギリス初のAI担当大臣であるカニシュカ・ナラヤン氏や、AI関連企業の創業者らが多数出演しています。さらに、アメリカの有力投資家がロンドンを訪れた際に出演するケースも増えているということです。
チェンバース氏は、ETNを立ち上げた背景について「業界における情報発信の空白を埋めるためだった」と説明しています。イギリスの既存メディアはテクノロジー業界の急速な変化に追いついていないと指摘しています。調査会社ディールルームによると、今年に入りロンドンの新興企業はすでに147億ドル(約2兆2785億円)を調達しています。このうち6社は、それぞれ5億ドル(約775億円)以上の資金を集めており、ヨーロッパにおいてかつてない規模の資金が流入しているということです。
番組の知名度が上がるにつれ、出演を希望する売り込みが週に70件ほど寄せられるようになりました。これまでの週2回の配信では対応しきれなくなったことが、今回の配信日数拡大の主な理由だとしています。
新しい番組構成では、イギリス時間の正午から午後3時までライブ配信が行われます。最新ニュースの解説に加え、ゲストとの対談に2時間が割り当てられる予定です。今後は討論会や、起業家が投資家に事業を提案するピッチセッションなども企画しているということです。番組の収益は主に広告収入で賄われており、すでに暗号資産関連企業やAI音声技術の企業などがスポンサーに名を連ねています。
また、ETNはロンドンを拠点としながらも、ヨーロッパ全域からのゲスト招致に注力しています。アテネやパリで開催される主要なテクノロジー会議からの現地配信も行っており、多様な文化や人材が交わるヨーロッパの強みを発信していく方針です。
さらに、アメリカの起業家の出演も歓迎しており、ヨーロッパとアメリカを対立させるのではなく、ヨーロッパから世界的な繁栄を後押ししたいとしています。
創業者らは自らをジャーナリストではなく、テクノロジー業界の内部関係者と位置づけています。既存のメディアに取って代わるのではなく、連携してニュースを発掘していく考えを示しています。ETNは、ヨーロッパ発の成功事例を記録し発信することで、若い世代が大学卒業後に起業を目指すような環境づくりに貢献したいとしています。
