アメリカ国防総省は、バッテリー素材を開発するアメリカの新興企業「シラ(Sila)」に対し、シリコン炭素ベースのバッテリー素材の生産拡大を支援するため、14億ドル(約2170億円)の融資を行うと発表しました。
この融資は22日に発表されました。現在、自動車メーカーや防衛関連企業などのアメリカ国内のバッテリー需要者は、中国国外で製造された素材の調達に苦心しています。リチウムイオン電池の負極材の多くには黒鉛(グラファイト)が使用されていますが、そのサプライチェーンは中国企業が支配的な地位を占めているということです。
こうした中、複数の企業がシリコン負極材の開発を進めています。この素材は、従来の黒鉛に比べて20%から40%多くの電力を蓄えることができるとされています。エネルギー密度の向上により、バッテリーの長寿命化や小型軽量化が期待されており、ドローンや電気自動車(EV)など、防衛やモビリティ分野での活用において魅力的な特性を備えているということです。
シラ社は、ワシントン州モーゼスレイクの工場でシリコン炭素素材を製造しています。これにより、関税や地政学的な懸念に縛られない数少ない負極材の国内供給源となっています。
同工場は今年9月に稼働を開始し、現在の規模で年間約2ギガワット時相当の負極材を生産できます。シラ社は現在、工場の規模を5倍に拡張する計画を進めており、これにより10万台以上のEVを賄うのに十分な素材を生産する方針です。
工場拡張の資金として、同社は今年7月に3億ドル(約465億円)を調達しました。調査会社ピッチブックによりますと、シラ社はこれまでに民間投資家から総額15億ドル(約2325億円)以上の資金を集めているということです。
同社はすでに、メルセデス・ベンツやパナソニックとの間で供給契約を結んでいます。ウクライナや中東地域での紛争が長期化する中、今回の国防総省からの融資により、防衛関連企業との新たな契約への道が開かれる可能性があるとしています。
国防総省はシラ社への融資と並行して、他の3社との契約も発表しました。
オーストラリアの「サンライズ・エナジー・メタルズ」には、軽量合金に広く使用されるレアアース(希土類)の一種であるスカンジウムの採掘に向けて4億ドル(約620億円)を融資します。また、ミネソタ州の「ナイロン・マグネティックス」は、スマートフォンやミサイル、電気モーター向けのレアアースを使用しない新型磁石の製造のため、1億5000万ドル(約232億円)の融資を受けました。さらに、政府はアルミニウムを含む鉱物を採掘する「ストラテジック・ボーキサイト」に対し、8500万ドル(約132億円)の出資を行ったということです。
