アメリカ陸軍は、テキサス州オースティンに拠点を置くスタートアップ企業のターン(Tern)と、GPSに依存しない低コストの代替ナビゲーション技術の導入に向け、1,126万ドル(約17億4,500万円)の契約を結んだと発表しました。
この契約により、アメリカ陸軍はターンのナビゲーション技術を軍用車両に導入する方針です。同社はこの技術を「戦場向けのグーグルマップ」と呼んでいますが、導入の具体的な規模については明らかにしていません。
現在、中東やウクライナ、ロシアの上空などでGPSの通信障害が増加しており、アメリカ軍はこうした状況に対応するためターンの技術を採用したということです。アメリカ軍自身もGPSの妨害(ジャミング)実験を行っているとされ、今年初めに起きた医療搬送機の墜落事故の一因になった可能性も指摘されています。アメリカ議会やトランプ前大統領の1期目の政権下でも、軍事利用に向けたGPSに依存しない強靭なナビゲーション技術の開発が推進されてきました。
ターンの技術は、現代の車両が走行中に生成する様々なデータを活用し、GPSなしでナビゲーションを行う仕組みです。同社の共同創業者でCEOを務めるショーン・ムーア氏はインタビューに対し、「車両の診断基板に接続したデバイスをタブレット端末と連動させ、兵士に位置情報や経路を提供するシステムです」と説明しています。
ムーア氏によれば、このシステムは車両のデータを妨げることなく受動的に読み取り、独自の手法でナビゲーションに利用可能な情報に変換するということです。これにより、車両は外部と通信しない「エッジ処理」を用いて、自らの位置を独立して特定できるようになります。オンロードやオフロード、トンネル内、砂漠など、あらゆる環境で有効だとしています。
共同創業者のブレット・ハリソン氏は最近、テキサス州からカリフォルニア州までの約2,100キロのドライブでこの技術をテストしました。その際、従来のGPSは何度も途切れたものの、ターンの技術は一度も位置情報を見失わなかったということです。
また、この技術の重要な特徴として、外部ネットワークに接続しない閉鎖的なシステムであることが挙げられます。単なるバックアップにとどまらず、敵対者による通信妨害を受けにくいという利点があります。ムーア氏は、「一般の消費者はGPSシステムの脆弱性をあまり認識していません。スマートフォンの青い点は常にそこにあるものだと思い込んでいます」と指摘しています。
退役軍人でもあるハリソン氏は、アフガニスタンでの特殊作戦任務の経験がこの技術を開発する大きな動機になったと述べています。ハリソン氏は、「開発を始めた当初から、単なる実験ではなく、実際に配備可能で拡張性のある技術でなければならないと認識していました。実社会で役立つものを作りたかったのです」と語り、今回の陸軍との契約は長年の取り組みが評価された結果だとしています。
