アメリカの公共図書館で、巨大IT企業が提供する人工知能(AI)の機能を無効にする方法を学ぶワークショップが開催され、関心を集めているということです。利用者の意図に関わらずAIが組み込まれることへの不満を背景に、デジタル技術に対する自己決定権を確保する狙いがあるとしています。
東部ペンシルベニア州フィラデルフィアの図書館では、司書のチャーリー・ベイリー氏が「AIを避ける」と題したワークショップを開いています。会場となる子ども向けの教室には多くの大人が集まり、スマートフォンを操作しながら、アップルの「アップルインテリジェンス」やグーグルの「ジェミニ」といったAI機能を無効にする手順を学んでいるということです。
ベイリー氏は、AIツールが日常生活に強制的に導入されていると感じる人々の不満から着想を得たとしています。約1時間のワークショップでは、AIの仕組みや利用するメリットを説明したうえで、主要な端末やプラットフォームで特定の機能をオフにする方法を指導しています。
ベイリー氏は「図書館員として、デジタルリテラシーを向上させ、AIツールを使用するかどうかの自律性を利用者が取り戻す手助けをすることが重要だ」としています。また、利用を避けることが困難な設計になっている現状において、こうした支援が不可欠だという方針を示しています。
この取り組みは、東部メイン州の図書館員、ハンナ・サイラス氏の活動が発端となっています。サイラス氏が自身のワークショップについて論文を発表したところ、世界中の図書館員から問い合わせが相次いだということです。
サイラス氏の図書館では、「AIが勝手にメールを作成しようとする」「機能をオフにしたい」といった相談が増加していました。これを受けて開催したワークショップには、通常のパソコン教室を大幅に上回る約70人が参加し、キャンセル待ちが出るほどの反響があったとしています。フィラデルフィアの図書館でも、SNSでの告知に普段の数十倍の反応があり、追加の講座を設ける事態となりました。
ワークショップの参加者からは、AIのデータセンター建設による環境への影響などを懸念する声が上がっています。一方で、医療分野などでのAIの発展を完全に否定するものではないということです。参加者同士でAIによる検索結果を非表示にする方法を共有するなど、連帯感も生まれているとしています。
サイラス氏は、巨大IT企業によるAIの強制的な導入が、利用者の不満を限界に達させた可能性があると指摘しています。一連の動きは、技術を完全に拒絶するのではなく、利用者が技術との関わり方を自分自身で管理し、選択の自由を求めるための取り組みだということです。
