アメリカのEV=電気自動車メーカー「スレート」は、開発中の低価格ピックアップトラックについて、標準モデルの販売価格を2万4950ドル(約387万円)に設定し、搭載するバッテリーの戦略を変更したと発表しました。
同社によりますと、オプションとして設定していた航続距離240マイル(約386キロ)のバッテリーパックを廃止するということです。一方で、標準モデルの航続距離を従来の150マイル(約241キロ)から205マイル(約330キロ)に引き上げるとしています。
この変更の背景には、アメリカにおけるバッテリー市場の大きな変化があります。当初、同社は自動車業界で広く使われているNMC(ニッケル・マンガン・コバルト)電池を採用する計画でした。NMC電池はエネルギー密度が高く、航続距離を伸ばせる利点がありますが、ニッケルやコバルトの価格が高騰しているため、コストがかさむという課題がありました。
これに代わって近年、自動車メーカーの間で採用が広がっているのがLFP(リン酸鉄リチウム)電池です。LFP電池はエネルギー密度では劣るものの、ニッケルやコバルトの代わりに安価な鉄などを主原料として使用するため、コストを約40%削減できるということです。
これまでメーカーがLFP電池の採用を見送ってきた理由の一つに、サプライチェーンが中国に集中していることが挙げられます。アメリカのインフレ抑制法の下では、中国製のバッテリーを使用した場合、最大7500ドル(約116万円)の税額控除の対象外となるためです。しかし、税額控除を廃止する新たな法案が浮上したことで、中国メーカーからの調達に対する懸念が払拭されたということです。スレートは、中国の合肥に本拠を置くバッテリー企業「ゴーション(Gotion)」と提携し、イリノイ州の工場で製造されるバッテリーセルを調達する方針です。
また、LFP電池のもう一つの課題であった航続距離の短さについても、充電ネットワークの拡大によって消費者の不安が和らいでいるとしています。さらに、技術の進歩によってNMC電池との性能差も縮まっており、現在ではフォードやGM、テスラなどの大手メーカーもLFP電池を採用しています。
スレートは、バッテリーの製造において「セル・トゥ・パック」と呼ばれる最新の技術を導入する方針です。これは、従来のモジュールを省き、バッテリーセルを直接パックに組み込む手法です。これにより、製造工程を削減できるだけでなく、体積あたりのエネルギー密度を向上させることが可能になるということです。また、LFP電池は劣化の懸念が少なく、日常的に100%まで充電して使用できるという利点もあります。
LFP電池が市場全体を独占するわけではありませんが、低コストと実用的な航続距離を両立できることから、アメリカで最も安価なEVの実現を目指すスレートにとって、最適な選択になったとみられています。
