アメリカの人材紹介会社「クリスチャン・アンド・ティンバーズ(C&T)」は、AI(人工知能)業界において、顧客企業に常駐してシステムの実装を担う「フォワード・デプロイ・エンジニア(FDE)」の需要が急速に高まっているとする調査結果を発表しました。一方で、企業のAI投資に対して確実な利益をもたらすことができる高度なスキルを持つ人材は、アメリカ国内にわずか2000人しか存在しないということです。
調査によりますと、企業が最新のAIモデルを利用する段階から、実際の業務フローに組み込んで収益を向上させる段階へと移行するなかで、FDEがAI業界で最も求められる専門職になりつつあるとしています。C&T社の予測では、こうした専門人材の需要は今年末までに2100%増加する見通しだということです。
この調査は、180社の採用担当幹部250人以上への聞き取りや、大手企業の幹部を対象としたアンケートなどに基づいてまとめられました。今年の初めには、FDEの採用を計画している企業は全体の5%から10%にとどまっていましたが、第2四半期の終わりには70%に急増しました。大手コンサルティング会社などでは、FDEの数を10倍に増やし、20人から100人規模の専門チームを構築する方針を示しているということです。
C&T社の創業者であるジェフ・クリスチャン氏は、「これまで見たことがないスピードで変化が起きています。企業は夏の半ばにもかかわらず採用活動を進めています」と述べています。
現在、アメリカの市場には約1万7000人のFDEが存在するとされています。しかし、数千万ドル(数十億円)規模の投資利益率(ROI)を確実にもたらすことができるトップクラスの人材は、そのなかのごく一部に限られるということです。
企業のAI投資に対する評価も厳しさを増しています。クリスチャン氏は、「金融市場はまもなく、数億ドルから数十億ドル(数百億円から数千億円)をAIに投資しながら利益を出せていない企業に対して、厳しい評価を下し始めるだろう」と指摘しています。
一方、AI開発企業も大きなプレッシャーに直面しています。最先端のAIモデルの学習と展開にすでに数百億ドル(数兆円)を費やしており、利益を確保するためには、自社の技術をできるだけ多くの企業に導入させる必要があるためです。このため、「オープンAI」や「アンスロピック」などの主要企業は、自社の技術を企業に普及させることを専門とするFDEの組織を新たに設立する方針です。
また、技術を導入する企業側にも変化が見られます。独自のビジネスプロセスや機密情報がAI開発企業に流出することを防ぐため、外部の企業に頼るのではなく、自社内でFDEのチームを構築し、技術の自立を目指す動きが広がっているということです。
今後の見通しについてクリスチャン氏は、数年後にはAIがAIを自動化するようになり、FDEの役割自体が不要になる可能性もあると指摘しています。短期的にはAI関連の人材需要は高い状態が続くものの、将来的には採用市場全体に影響が及ぶ可能性があるとしています。
